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悪魔がウチにおりまして・730

ウチには悪魔が居る。

洋服を穴が開くほど見ている悪魔が。


「ニンゲン、この服、虫に食われてます」

実際に開いている穴を見てるとは思いませんでした。

「本当だ、古いからタオルにして捨てますか」

着古したTシャツだから、タオルというより雑巾か。

そんな折、マンガ肉を持ったイモ虫が通る。

「……まさかとは思いますけど、イモちゃんが食べたんじゃないですー?」

悪魔がTシャツをだるだる伸ばしながらイモ虫を睨む。

伸ばすな、雑巾としても使えなくなるでしょう。

「失敬な!みーはグルメなのでヒトの皮脂とか洗剤とか付いている服なんて食べるわけないじゃないですかっ!」

言ってることは間違ってないけど、角が立つ言い方するわね。

「ほな、イモちゃんちゃうかぁ」

悪魔、その構文禁止です。

「だいたいみーはご覧の通り肉食です。お洋服など食べてもお腹いっぱいになる者などいるのでしょうか?」

一瞬で古めかしい服を着て髭まで伸ばしたイモ虫。

「その服は……ボクの友だち、李微子ではないですか!」

イモ虫だよ、そんな長生きしてて堪るか。

「みーがこのような美しー姿になってしまっても気付いてくれるとは」

「コント、止めてもらっていい?」

長くなりそうだから中断。

『えー』

こういう時だけハモるんじゃない。

「虫に食われた服があるなら防虫しましょ」

他の服も調べて来年には生き延びてもらわないと。

「のっと!ぎるてぃー!」

無罪なら進めますね。

「繋げちゃダメん!切って切って!」

「なんでよ、アンタ。服食べないなら関係ないでしょ?」

こっちはお気に入りの服がやられるかどうかの瀬戸際なんだから。

「防虫剤臭いんです!ボクがこの家に来れなくなっても良いんですかー!」

『うん』

あら、悪魔。意見が合うなんて奇遇ね。

イモ虫、目を真ん丸にしている。

「なんで!?」

「イモちゃん、うち来てもいつもゴロゴロしてお菓子こぼすじゃないですかー。掃除する身にもなってください。ねー、クモちゃん」

アンタが掃除してないことはわかったよ。

ただ、クモも防虫剤大丈夫なのかしら?虫だし。

ひょっこり顔を出したクモ。

「ねぇ、防虫剤平気?」

クモは首を傾げる。フリップ書き書き『よわい』

つまり、クモにとって効かないってことね?

「……イモ虫、もしかしてそこらの虫と同じレベル?」

「いーやー!みーとーめーなーいー!」


ウチにはイモ虫が居る。

さっきから防虫剤に慣れようとしているイモ虫が。

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