悪魔がウチにおりまして・727
ウチには悪魔が居る。
ハンカチで涙を拭っている悪魔が。
『ジョン、ジョーン!なんで、なんで私なんかを生かすために』
『別嬪さんには涙は似合わねぇぜ、ほら笑って……がくっ!』
がくって言ったな。
「ジョン、ジョーン!」
最後は画面に向かって叫ぶ悪魔ね。
そのシーンから画面が暗くなり、エンドロールに移っていく。
声だけなら感動的かも知れない。
ただ、死んだのがゾンビで、泣いてた女の人?がこてこてのロボットだったのよね。
「……悪魔、泣くか?今の映画」
鼻をかみながら、悪魔はすごいスピードでこちらに振り向いた。
「ニンゲン!『恋はソーラン・網走の風は冷てえぜ』で泣かないとか!ニンゲンの血は何色ですか!」
今聞いた言葉がタイトルで無いことを信じたい。
もしくは聞かなかったことにしたい。
「……あらすじを」
「えっと、人体実験に自ら志願したリチャードが」
待て待て、最後死んだのジョンじゃないの!?
「ですよ?リチャードが人体実験で鋼の身体を手に入れて、ジョンと悲恋を添い遂げる異種ラブストーリーです」
あのロボット、リチャード!?
「リチャード、女の人?」
「え?男ですよ?愛は性別を越えるのです」
そうかも知れないけど!見た目、オズの魔法使いに出てくるブリキだよ!?
「ちなみにジョンはリチャードを女と思ってました」
ダメじゃねーか。
「で、ジョンはなんでゾンビに?」
「自ら志願して」
「また!?」
脚本家、何やってんだ。
「ロボットになるつもりが精神が肉体に残って。そのまま崩れていってしまったのです」
ラブストーリーというには救われなさすぎません?
「ちなみに2もあってジョンとリチャード、そしてマリーが絡んでの三角関係に」
ジョン生きてた、絶対死んだと思ってた。
「2は大変なのです。地獄の軍勢を引きつれて蘇ったジョン、復讐を誓ったロボ軍団のリチャード。常に背後を取るマリーの三者による手に汗握る戦いが」
日本ではそれを三つ巴と言うのよ。
「3になるとですね」
「終われ!?」
2で破綻してるんだからさ!
その後、結局7部作のあらすじを最後まで聞かされるのでした。
ウチには悪魔が居る。
「ところで舞台は全部北海道?」
「それが、全編沖ノ鳥島です」
範囲が狭すぎる!




