悪魔がウチにおりまして・726
ウチには悪魔が居る。
空を走っている悪魔が。
「当たり前に空飛ばないでくれない?」
仕事から帰るとリビングでルームランナーしている悪魔。
まぁそれは良い。
問題は空中をその場で走っていることだ。
ご丁寧に首にタオルを巻き、汗を拭いながら走る姿はまさにランニング。
「ニンゲン!スポーツの秋です!」
とりあえず秋って言っておけば許されると思うなよ。
「なんでナチュラルに空飛んでるの?」
「だってルームランナー高いんですもの。どうせ2回しか使わないです、だったら飛んだほうが無駄じゃないですよ?」
自分の飽き性を分かったうえで正しいんだけど重力的に間違ってるからダメ。
「えー?ニンゲンんー?もしかして飛べないんですかぁ?」
イヤミったらしく煽るこの化生、どうやれば滅せるのだろうか。
「ミミ殿、ちょづいてるとまたぶん殴りますよ?」
その低い声狐の声を聞くとゆっくりと着陸する悪魔。
「ごんちゃん、まだ怒ってます?」
「いえ?天井が焦げて2週間使用禁止になり、あのあと消火剤の掃除に3時間かかって、母上から5時間説教されまちたが怒ってませんよ?」
尋常じゃないくらい怒ってるじゃないの。
「なら、安心ですー。またあそ」
「あ?」
ちなみに狐ね?私じゃないから安心しないで?
浮かび上がりかけた悪魔が平伏するまでそんなに時間がかからなかった。
「ミミ殿、いかがなさいまちた?面を上げい」
このキレ方怖いなー、交渉の余地無さそうだもんなー。
「ほ、本日はお日柄も良く、この部屋のスペースを圧迫しないようにエアルームランなどで体力を消費するなどと」
悪魔の下手に出方、独特よねー。
「結構ですね、健やかに……穏やかに過ごせると良いですね」
その微笑みが、とても怖いです。
「ありがたき幸せー」
江戸しぐさよろしく、代官にひれ伏す平民。
「狐ちゃん、遠慮ないわね」
「ニンゲン殿も昨日あれだけ説教に付き合わされてめげないので?」
大丈夫、あのあとプリン禁止を言いつけたから。
「ニンゲンー、ようかんは、ようかんは食べても良いのですかー」
私に対しての要求は遠慮ないのな。
「ほう、ミミ殿はようかんを食べたいのですね。ニンゲン殿どうでしょう。ようかんも禁止しては」
ここに鬼が居ます。
「ごんちゃん!?プリンだけでも拷問だというのに!」
しばらく狐の怒りは続くんだろうなー。
ウチには悪魔が居る。
床に首をめり込ませている悪魔が。




