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悪魔がウチにおりまして・723

ウチには悪魔が居る。

キッチンで歌っている悪魔が。


「どんどんどーん、どどんどーん」

今夜は丼ものなんだろうなぁ。

「天丼、かつ丼、親子どーん」

丼ものならはずれは無いから安心かぁ。

「牛丼、豚丼、プテラノドーン」

最後、とんでもないの混ざったなぁ。

「ニンゲンー、プテラどれくらい乗せますー?」

確定しちゃったなぁ。

「悪魔、私食べられるー?」

「ニンゲンさん、プテラを食べたこと無いんですか?」

リビングで缶コーヒーを飲んでいた牛が目を丸くする。

「まさか恐竜ってわけじゃないでしょ?」

「恐竜は滅びましたよ」

目を細める牛。知ってるよ、知ってるから怖いのよ。

「牛さんはー?」

「サシ少なめでー」

サシが入ってそうなヤツが少なめって。

「ニンゲンさん、それは牛差別ですよー。私こう見えて体脂肪率低いんですからー」

「お待たせですー。プテラの丼です」

キッチンから悪魔がどんぶりを3つ持ってくる。

ぱっと見、どんぶりを覆っていたのは……。

「魚?」

「ですです、活きのいいプテラが手に入ったのです!」

なんなのだ、プテラ。

そのどんぶりを見て、牛は口をゆがめた。

「サシ、少なめって言ったじゃないですかー」

「それでも少ない部位を選んだですよー?」

赤々と煌めく魚肉、輝いちゃいけない気がするが、そこを差し引けばマグロ丼のそれに近い。

「悪魔、これって安全?私にとってのバラムツにならない?」

確か吸収できない魚で100%お腹下す魚だったはず。

「大丈夫ですよー、ウチの店で限定商品として出したことありますし」

随分と冒険したな、牛。

「それなら……」

醤油をかけて、切り身をひとつまみ。

意を決して口に運んでゆっくり噛みしめる。

「……美味しい」

見た目通り、ほぼマグロ。ただ味がこっちのマグロよりも濃い気がする。

「良かったですー、ニンゲンワガ……味にうるさいですからー」

言い直しても取り繕えてないんだよ。

「まぁ、今日は許してあげましょう」

美味しいご飯を作ってくれたからね。


ウチにはエセマグロ丼が並ぶ。

「おや、プテラの丼。それがちの分はサシ多めで」

イメージが逆だったなぁ。

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