悪魔がウチにおりまして・719
ウチにはイモ虫が居る。
ツイストポーズをとっているイモ虫が。
「このシーン、モザイク必要じゃない?」
「ニンゲンさん!ぬわぁにを言ってますか!こんなプリチーなみーが居るのに必要など!」
黙れ、存在自体センシティブ。
虫は苦手な人多いの分かるでしょ。
「イモちゃん、動かないで欲しいですー」
私にツッコミを入れたイモ虫に注意を入れる悪魔。
その手にはスケッチブック。
「……念のため確認しますが、何をなさっているのでしょうか?」
「発射会です!」
写生だよ!何を飛ばすのさ!
「ミミ殿お静かに。心を鎮めねばいい絵など描けるわけなどありません」
すました顔で鉛筆動かしてますが、モデルはイモ虫ですよ?
「……気付いてはいけないのです」
ゴメン、狐も頑張ってたんだね。
「なんでいきなり絵を描こうと思ったの?」
どうにか話題を逸らすしかあるまいよ。
「それはですねぇ、芸術の秋だからです!」
真面目な答えを期待した私がバカだったよ!
「モデル、イモ虫で良いの?」
「みーをモデルにできる僥倖、噛みしめるといいっ!」
「いちいち動くなですー」
悪魔の物言いを考えると、コイツも他の子たちに断られたんだろうなぁ。
「他の子たち、恥ずかしがってたりジッと出来なかったり色々なのですー」
うぱとか絶対止まってくれなそうだもんね。
「ミミちゃん!みーを代用品みたいに言うなんていい度胸です!いいんですか?動きまくりますよ?イモ神踊りますよ?」
やめろ!?めっちゃ怒られるからな!?
「そうしたら四肢に鎖繋ぐです」
過激なことを言う悪魔にイモ虫は指を振った。
「ちっちっち……ボクの手足、4本じゃ済みませんよ?」
片方の口を歪めている。
いろいろダメなんだけど、なんでイモ虫に顔が見えるのよ。
「ごんちゃん、しめ縄ー」
「ご自身でどうぞ」
「ミミちゃん、死ぬから。浄化されちゃうから」
ビビることなく、手を振るイモ虫。
浄化されてしまえばよろしい。
「悪魔、ちゃっちゃと描いて消しちゃえば?」
「そんなパズルゲームみたく言わないで!」
くねくねと揺れるイモ虫。本気で燃やしてぇ。
「ミミ殿、描き上がりました」
狐は満足げに鼻息を漏らす。
その絵を見た……うん。
ウチには画伯が居る。
本狐の名誉のために誰かは言いません。




