悪魔がウチにおりまして・70
私は砂漠にいる。
今日のご飯はサボテンのステーキです。
「なんで修行相手が出てこないのですか?」
味も素っ気もない、ただ焼いただけのサボテンをはむはむしながら砂漠を眺めていると、悪魔がいきなり叫びだした。
「普通、最大のライバルが現れる胸アツ展開が起こるべきでしょう」
「ほら、サボテン食べる?」
「食べるー」
いきり立っていた悪魔に焼けたサボテンを渡す。
ひと口食べると微妙な顔をしている。
「…美味しくないです」
「分かるよー、美味しくないよねー」
ただの植物を焼いただけで美味しく食べられるほど、徳は積んでいません。
ぎぶ・みー・どれっしんぐ。
「そうではなく!ここは修行の場所なのですよ?」
とりあえず渡したサボテンを食べ切ってから再びいきり立つ。
なんか余裕があるなー。
「そうは言っても誰も出てこないなら仕方ないでしょ?気長に、気長に」
幸い、サボテンはたくさん生えている。
餓死する心配はなさそうだ。
「ニンゲン、怖くないのですか?閉じ込められて出れないかもですよ?」
その可能性もあるけど、無駄に行動しても事態は変わらない。
帰ったらジンギスカン鍋を作ることは決定していますが。
「あんたが怒ってるからね、却って冷静になっちゃうよ。さ、お水探しに行こ」
腹ごしらえの済んだ後、悪魔の手を引いてオアシスを探しに行く。
ご飯もだけどどちらかと言ったら水のほうが大切だからね。
「ニンゲン、強いですね」
「そう?慣れてる」
言った後、マズいと思った。
悪魔がぴくっと反応したが、聞き返してこなかった。
こういうところの気遣い出来るのはズルいよね。
私は歩き始める。
まずは、水!




