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悪魔がウチにおりまして・712

ウチには悪魔が居る。

椅子に縛り付けられている悪魔が。


「悪魔、またなんか悪いことしたの?」

最近のこの子の悪行を考えると誰かから折檻されても不思議ではありません。

「ニンゲン!?ボクのこと、そんな目で見てたですか!?」

いやー、見るでしょー。追い出さないだけ感謝してほしい。

「今回は何も悪いことしてないのですー!」

「てか、誰に縛られたの?」

コイツ、自分の悪事はしっかり自覚しているのは信頼してる。

つまり今回は本当に何もしていないんだろう。

「ボクです」

テーブルの下から出てきたのは自分をたぬきと思ってるモグラ。

「モグ、また悪魔が何かしたの?」

「たぬです。何もしてません。むしろこれからボクがする側です」

「おかしくないです!?」

盗人猛々しいとはまさにこのことだろうなー。

「モグ、命の危険は?」

「……たぶん?」

なら、ええかぁ。

「ええ訳なかろうです!ぽんちゃん!ボクの身体をどうするつもりですか!」

悪魔が椅子をぎっこんばったん。

それでも倒れず、ほどけず。謎技術で椅子に吸い付いて離れない悪魔。

モグ、その方法あとで教えて。

「なぁに、悪いようにはしません……ミミちゃんにはウチの畑で獲れたモノを食べてもらうだけです」

「えー、それなら良いかもですー」

一気に気の緩んだ声を出す悪魔。

……獲れた?

「ミミちゃんなら喜んでくれると思いますよ」

モグラがテーブルの下から取り出したのは、ピチピチと元気に尻尾を振っている鮭。

「ぽんちゃん?なぜ畑で鮭が獲れるです?」

「ミミちゃんにはお刺身で食べてもらおうかと」

会話、会話ぁ!

「それは寄生虫とか居ないですか!?お腹下しませんか!?」

おー、悪魔。よく知ってた。

「それを調べるためにミミちゃんに食べてもらおうかと」

「遠慮ねぇ!?」

悪魔の場合、多少虫が居たところで消化しそうだもんなぁ。

「虫とおっしゃいまして!?」

クローゼットから飛び出したイモ虫、ハエ叩きフルスイング!

たまたま開いていたベランダから空の光になっていく!

「……イモ虫ちゃんの虐待があまりにも滑らかです」

仕方ないでしょ、窓開いてるって思わなかったのよ。

「さぁ、ミミちゃん。覚悟を決めて」

「助けてー!?」


ウチには悪魔が居る。

鮭の踊り食いをしている悪魔が。

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