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悪魔がウチにおりまして・711

ウチには悪魔が居る。

積読3冊目を消化した悪魔が。


「ふぅ……素晴らしいシナリオでした……」

パタンと本を閉じると冷めたココアを満足げにすする。

「悪魔、いつの間にそんな本を積んでたのよ」

「この前、本屋の”あなたはきっと騙される!叙述トリックが最高の名作コーナー”が有ったので」

台無しだよ、その催し。

「せっかくの休日なので騙しに騙され地団駄を踏んで過ごそうかと」

随分と特殊な癖をお持ちのようで。

「ニンゲン、ボクは怒っています」

「聞かなきゃダメ?」

「進行上聞いてくれた方が滑らかです」

……はい、どーぞ。

「最近、ただのどんでん返しのことを叙述トリックと言っている品評が多い気がします」

ガチの文句出てきた!?

「叙述トリックとは、小説じゃなければできない書いていないことを楽しむ、いわば賢者の愉悦。ただ騙せばいいわけではありません」

言わんとしていることは、わからないでもない。

「悪魔が好きな本って?」

「んー、叙述トリックに限るのであれば『九角館の殺人』『秋桜が咲く頃に君は』『ルビンの壺が砕けた』ゲームなら『Ever19』でしょうか」

絶妙に本当にある本なのやめなさい。

「おや、ミミ君。話すネタが無いからせっかくの秋の夜長を楽しめる小説をシェアしようとした顔してどうしました?」

あまりにも!あまりなメタ発言で入ってくるな、羊!

「羊さーん!羊さんも木っ端とはいえ商業作家ならボクの憤りをわかってくれますよね!」

「今のミミ君の発言に対しての憤りで合ってます?」

合ってても良いこと言ったよね、この毛むくじゃら。

「違います!ボクは一小説好きとしての意見です!」

あー、目を血走らせて。

「良いですか、ミミ君。本というのは売れなくなってます。本屋さんも潰れていく世の中生き残りに必死なのです」

「納得できません!」

突然羊に殴り掛かる。そのヒヅメを片手で止めた。

「ならば!本屋が握手券を付けて売っても良いとでも!?だからお前はアホなのだぁ!」

2匹は中空に飛び上がり拳を交わす。

そこに飛んでくるクモの糸。

「……ごめんね、うるさくして」

クモは手をふりふり、そのままロフトで昼寝を続けるのだった。


ウチには悪魔が居る。

「クモちゃーん……そろそろー……」

そのまましばらく反省させておくべき悪魔が。

「私、とばっちりでは!?」

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