悪魔がウチにおりまして・69
ウチにはツボがある。
いや、ツボって。
「ウチにあったので持ってきました」
羊が家に来るなりツボを持ち出した。
いや、ツボて。
「ヤギさん、こんな骨とう品よく見つけましたねー」
「何か知ってるの?」
悪魔がツボをつつき転がしている。
「これ、修行が出来るんですよー」
「修行!」
狐がぴょいんと背筋を伸ばしてツボを見つめている。
狐、割と脳筋だよね。
「しかし、なんでこんなもの持って来たんですか?」
「ほら、先日持ってきたコレはお気に召さなかったようですので」
部屋の片隅でオブジェと化したカメの甲羅。
そりゃお気に召すわけがないでしょう。
「なるほどー。ニンゲン強化計画ですね!…これ以上強くなったらボクたちマズくないですか?」
何気無礼だよー?
悪魔の頭をぐりぐりとこぶしをねじると羊が冷や汗を流している。
「まぁ、力が暴走してしまうよりも良いかと」
「で?今回そのツボを使って腹筋でも鍛えるっていうの?」
古い映画でツボに水を移すことをしていた気がする。
「いえ、こうするんです」
ヤギがツボの口をこちらに向けて、ぽんと叩いた。
「はい?」
気が付くとそこはただっ広い砂漠。
悪魔も一緒にいて頭を抱えている。
そして大きなため息を吐く。
「…ヤギさん、帰ったらキレます」
剣呑なことをつぶやく、珍しく本気で怒っている悪魔。
なんかパリパリ電気走ってるし。
「悪魔、ここどこ?なんで砂漠?」
なぜか私の顔をジト目で見る悪魔。
「ここはニンゲン、あなたの心の中です。正確にはツボの中なんですけど」
曰く。
あのツボは中に入って修行をするためのもの。
心の景色を現実にして、その中で敵を打ち倒すまで出られない。
そして、何が出てくるのかもわからない。
と言われても。
「ニンゲンの心の中がこんなに殺伐としているなんて…」
…待って?
いきなり不思議な世界に放り込まれてディスられても?
…私はツボの中にいるらしい。
どうやったら出られるか分からない、ツボの中に。
「下手すると死にますので」
「うそでしょ!?」




