悪魔がウチにおりまして・706
ウチには悪魔が居る。
ついでに牛とザリもいる。
「そりゃついででしょうけど、はっきり言われると傷付きますよ?」
ごめんて、シップ17号。
「タンクっす、号数も14引いて貰って……いや、おかしいっすね」
そうね、悪魔が勝手に付けた名前だもんね。
「ザリさーん、蒸し上がりましたよー」
牛がキッチンからのんびりとザリを呼ぶ。
「はいー、行きますー」
キッチンから水の流す音が聞こえている。
「ニンゲン、楽しみですねっ」
ナイフとフォークを構えた悪魔が揺れている。
……アンタか、今日の試作会許可したのは。
さらっと説明すると狐がオーナーで、牛が店長で、ザリが料理人です。
「ニンゲン、説明が雑です」
良いのよ、別にみんなすぐ忘れるから。
そんな感じでなぜかウチでザリガニが料理の試作をしているのだ。
「だって!味見ができるのです、新幹線2号のご飯は美味しいのです!」
8時ちょうどに発車しそうな名前、やめなさい。
「いやぁ、助かりました。なぜか今日はガスが点かなくて……そんなときにミミさんが通りかかってくれなかったら……」
ザリガニ君、なんとなくだけど他人を疑ったほうが良いと思う。
「ニンゲン、ボクじゃないです。ただ、道にはレンチが落ちてました」
それは自白と受け取ってよろしいか?
「できましたぁ、エビしんじょです」
エビのすり身をザリガニが持ってくる。
こんな実績解除はしたくなかった。
「ニンゲン、食べないので?」
何というか、罪悪感?
「……まさか同類と思ってます?てか、こっちの世界の生き物と同類なわけないじゃないですか」
そうよね、こっちにターコイズブルーのザリガニなんていないから。
「ニンゲン、無理に納得させずに良いのですよ?ボクの食べる量が減ります」
まったく、コイツったら……バレないと思ったのかしら?
牛をちらりと見る。牛は驚いたような顔をする。
「……任せていい?キッチン使わせた駄賃」
「あーい。……化けるなら、もっとうまく化けるんでしたねぇ」
エビしんじょに手を出しかけていた悪魔の頭に、キセルを振り下ろす牛。どっから出した。
「……な、なぜ」
殴られた瞬間に悪魔だったモノはどろりと溶ける。
「いやぁ、ミミさんならそもそも試食のシェア自体考えないので」
そ、悪魔の食い意地舐めちゃいけませんよ、侵入者さん。
牛が手を合わせている。
「もしかしておびき出した?」
「エサも必要でしょう?」
誰がエサですか……本物の悪魔、ドコー?




