悪魔がウチにおりまして・703
ウチには悪魔が居る。
お腹を抱えてうんうん唸っている悪魔が。
「食べすぎですね」
白衣を着た羊が聴診器をお腹に当てながら告げた。
「おーまいがー、おーまいがー」
ところで悪魔が神に祈って良いの?
「大飯食らいのミミ君がこんなにも苦しむなんて、何を食べたんです?」
「えっとカツパンと(15分中略)クロワッサンロールです」
よく覚えてるな!?
「なるほど、カツパンと」
「羊、サイレントです」
さすがに食品寿限無を15分繰り返されるの勘弁してほしいのだわ。
「羊さん、お薬をー」
「ラッパのマークでいいですか?」
……なんか、薬局の薬飲んでる悪魔、嫌だな。
「なんでもー。このお腹の痛みがオサラバイするのならー」
弱弱しく唸ってるけど、お腹だけ見たら普段の3倍に膨らんでいるからね?
「認めたくないものです……若さゆえの過ちというものは……」
1時間半前を若いと言うな、赤く塗るぞ。
「ニンゲン……赤ではありません……ピンクです……」
どうでも良いわ、そこ。
「さてニンゲンさん、このバ……ミミ君が苦しんでいるところですが、この場で決断することがあります」
バカって言いかけたね?
「何よ、そんな急ぐこと?」
白衣を脱ぐと神妙な顔に。
「ええ。……晩御飯を何にするかです」
「みぃー……!」
えっと、ついて行けませんが?
「ここは決断の時です。美味しいステーキ肉を買いに行くか、それとも脂の乗った魚を捌くか……いかがしましょう」
「鬼……悪魔……!」
悪魔は恨めしそうに、しかし弱弱しく羊に恨みごとを吐いている。
アンタも悪魔だろう。
「要するにこの子に嫌がらせをしたいわけね?」
「御意」
御意じゃないのだわ。私の意志じゃないのよ。
「あのね、そんな高級品を普段から食べるわけにはいきません」
「私が出します」
身銭切ってまで嫌がらせしたいの!?
「どうせならー……ジンギスカンにー……」
悪魔も悪魔で羊を食材にしようとするなよ。
「おや、悪魔さんをいじめる相談ですか?」
ややこしいタイミングで牛が来た!?
「ところでミミさんがこんな膨らんでいるのは?」
「カツパンと」
羊は寿限無を唱え直す。
「バカっすか?」
言い切った!?




