悪魔がウチにおりまして・699
ウチにはペンギンが居る。
……ペンギン!?
「残念!ボクです!」
知ってた!
ウチにいたのはもちろん南極の鳥類ではなく、着ぐるみを着た悪魔。
着ぐるみが着ぐるみ着てるのはどうにかしてほしい。
「どうして着てるのかなー?眠れなくなったかなぁ?」
子どもって眠れなくなると着ぐるみみたいなパジャマ着てた気がする。
「ボクは子どもじゃないですー!……人気が欲しくなったのです」
子どもみたいな理由じゃない。
「今アザラシが人気だと聞きました!なのでボクは独自の可愛さを追求するためにペンギンに!」
もー、今日疲れてるのよ、突っ込まなくていい?
ちらりとクモが合った。
(ボクですか!?)
(よろしく!)
声にならないクモとの会話を交わすと、クモはロフトから降りてきて悪魔の頭をぺちんと叩いて戻っていく。
それ、アンタのツッコミ!?
「……クモちゃん、なんかごめんなさいです」
やめなさい!?それ割と傷付くわよ!?
「とりあえず悪魔、その鳥脱ぎなさい?」
これ以上ケガ人を増やしてはなりません。
「えー……それならニンゲン、脱がしてください」
くるりと振り向いた悪魔。背中のチャックを見ると、ジッパーが……ない。
「……悪魔、緊急事態です。ジッパーがありません」
「……脱げない?」
「破いていいなら」
悪魔、ドバっと涙を噴き出す。
「高かったです」
「脱げません」
「ニンゲン!クモちゃん!ジッパーを探すのです!」
号泣の悪魔に懇願されると少し怖いものがある。
主に角が刺さりそうである。
「その格好で、家から出てないのよね」
「こんな恥ずかしい格好で出れません」
居たのね、羞恥心。
「そうなると、部屋の中にあり……」
「ありました」
何なんだよ、この無駄な時間!
「クモちゃん、そっとです、そっと。毛に食い込ませてはなりません」
悪魔の背中でジッパーをはめ直している。
「みぃっ!?毛が、毛がぁ!?」
クモー、全部毟ってもいいよー。
ウチには悪魔が居る。
背中が芝刈りにあった悪魔が。




