悪魔がウチにおりまして・691
ウチには悪魔が居る。
お風呂に向かっている悪魔が。
あれ?戻ってきた。
「ニンゲン、今日のお風呂って入浴剤入れました?」
ウチにそんなおしゃれな文化無いのは知ってるでしょう?
「入れてないわよ」
「ほな、入浴剤ちゃうかぁです」
その喋り方、日常で使うんじゃありません、イラっとします。
「どういうこと?」
「一緒に来るですー」
悪魔に連れられてお風呂場に入ると、そこには泡だらけの浴槽。
「悪魔、入浴剤入れた?」
「そのやり取りさっき逆でやりました」
正当性のあるツッコミは良い文化です。
スリッパを差してあげましょう。
「ニンゲン、それは誉めてません」
「なんで泡だらけなのかしら?」
「無視するなです」
喩えるならば、洗剤の分量を間違えた洗濯機。
「連れてくー」
……なんか聞こえた。
「ニンゲン、犯人います」
「聞こえないよ、悪魔」
「連れてくー」
あー、はいはい。
「ケサパサー、どこー」
「連れてくー」
風呂の中?どこよ?
浴槽に手を突っ込むと、泡だらけになったケサパサ(ずぶ濡れの姿)がサルベージされる。
「ぱさちゃん!なぜそんな姿に!」
「連れてく、連れてくー」
ふむふむ、お風呂掃除してたのね。
「連れてくー」
それでいきなり水が流れてきたと。
「ちなみにどの洗剤使ったの?」
「連れてく」
ケサパサはちゃんと風呂洗い用の洗剤を指さす。指どこだ。
「どれくらいプッシュしたですー?」
「連れてくー」
ほうほう、洗面器一杯に……て、おい。
「使い過ぎでしょ」
「連れてくー」
「目に沁みた?もしかしてダイブしたです?」
自分の身体をスポンジにしたってこと?
「いーい?お掃除そんなに洗剤要らないよ。手伝ってくれたの嬉しいけど、今度ちゃんと聞いてね?」
「連れてくっ!」
ケサパサは敬礼。だから、手はどこ?
ウチにはケサパサがいる。
ドライヤーで乾かされているケサパサが。




