悪魔がウチにおりまして・67
ウチには門がある。
妙な世界に繋がっている門が。
「お届けっすー」
その日唐突に畳から小包が飛んできた。
「ハンコとかいらないんでー」
…あっちに郵便あるんだ?
放り込まれた小包には読めない文字が書かれていた。
まぁ、悪魔に届いた物でしょうから放置していいのだろうけど。
問題は、なぜかガサゴソ音がするんだよなぁ。
動いてるよなぁ。
いざとなったら封印すれば…いかんいかん。
最近あっちの現象に慣れすぎて行動がズレてきている。
一般人、一般人。
「今日荷物届きませんでしたー?」
「ミミ殿、何か頼まれたのですか?」
悪魔と狐、クモのご帰宅である。
全員泥だらけで帰って来たのでそのまま風呂に放り込む。
『ニンゲンー。何か届きませんでしたー?』
「届いたよー。なにあれー」
『冷蔵庫、入れてくれましたー?』
「入れてないよー」
『あちゃー』
…急いで封を切って箱を開ける。
中には解けかけの雪だるまが入っていた。
「で?何頼んだの?」
悪魔が正座して足のしびれと戦っている。
たった5分で情けない。
「あちらで有名なかき氷がありまして。箱に冷凍って書いてあるからしまってくれるかなって」
ひとつもこちらの文字書いてない物を読めと?
「動いていたけど」
「産地直送踊り食いが人気でして」
「生きてるの?」
「魔力を込めて、温かいものに触れると動くようになってます」
横を見れば、雪だるまをつつく狐。
触れたら踊るフィギアのように左右に揺れているものの、解けかけのせいで不安定である。
「宿主殿、これは!楽しい!」
変なスイッチ入ってるよ。
「今後自分で受け取れるときに運んでもらいなさい」
「ニンゲン、文字を覚えてくれないのですか…?」
「こちとら英語3だったのに?」
まして使う需要の無い文字など覚えられるか。
その夜、雪だるまをみんなで食べたのだが、確かに美味しかった。
ふむ、この文字が冷凍ね。
ウチには悪魔が居る。
足のしびれで横になりながら雪だるまを食べている悪魔が。




