悪魔がウチにおりまして・683
ウチには悪魔が居る。
ちょっと焦げている悪魔が。
「悪魔、なんで焦げてんの?」
悪魔の後頭部の毛が少しばかり黒ずんでいる。
「何言ってるですか、ニンゲン!昨日一緒に大気圏ダイブしたじゃないですか!」
いらん、いらん。トンチキが終わったら全部リセットされる相場を無視しないで。
「まさかミミ君が星屑になるなんて、想像できませんでした……!」
羊さん、ハンカチで涙拭ってるところ悪いけど、その星屑目の前でトーストにバター塗ってるんだわ。
「いやー、このバタートーストが無ければ一巻の終わりでしたー」
悪魔も悪魔でテキトーに合わせてるんじゃない。
「ニンゲンさん、このゆで卵は立つのでしょうか?」
牛が手に持った、殻も剥いていない卵をしげしげと眺めている。
「牛さん、机にがつーんするです、がつーんって!」
トーストを置いた悪魔が手を上下に振って、机にヒヅメを激突させて悶えている。
「ふぁにー・ぼーん……!」
「骨じゃないでしょ」
こんなくだらないことで突っ込んでしまった!
「ニンゲンにはわからないのです!例えるならタンスにローキックしたら、角に当たった感じです!」
せめて小指にしなさいよ。
「しかしなんで宇宙に居たのかしら?」
「宇宙じゃなく、宇宙です!」
おっと指が。
「目が、目がぁ!?」
転がる毛玉に寄り添う毛玉。ケサパサ、放置でいいのよー。
「あれ、気付いてませんでした?連れ去られてたんですよ?」
はいぃ!?
「連れ……連れ……!?」
「ニンゲン、分かって無かったですー?」
おっと、指が、パート2。知ってたなら教えなさい。
「最近悪しきものの動きが活発ですからね。力ある者を取り込んだり取り入ったり動きが騒がしいのです」
羊、割と大変なことを話してるはずなのにところてんをすするのやめない?
「私、さらっても大したこと……」
悪魔、羊、牛、なんならケサパサまで揃って大きくため息を吐く。
「ニンゲン、自覚しているのに周囲に同意を求めるのって性格悪いですよ?」
1番言われたくない悪魔から言われた!
「つまり、私にも害悪が襲ってくるから気を付けろって?」
ナマモノフレンズ、揃ってサムズアップ。
とってもムカつきます!
「ニンゲンも自分ひとりで守れるようになりませんと」
なんだろ、ちゃんとした忠告なのに受け入れがたいのは。
ウチには悪魔が居る。
「トースト焦げたですー!」
さっきまで少しカッコよかったのに……。




