悪魔がウチにおりまして・682
ウチらは宇宙に居る。
誰か説明をしてくれ。
「悪魔、なんで私たち宇宙に居るの?」
宇宙服もなく、普段着で漂う状況、なんで生きてるのかしれません。
「ニンゲン、宇宙ではありません。……宇宙です」
誰かこのバカを隕石にくくりつける許可を。
「ニンゲン、ロープを探すなです。ボクも目が覚めたらこんな状況でー」
「トンチキ回ってことで帰る努力しなくてもいいヤツ?」
悪魔、眉間をぎゅっと寄せる。
「ニンゲン、それはメタ過ぎるというものです。おそらく皆は帰れなくてあたふたしているボクたちを見て楽しむのです」
いい趣味してはりますなぁ。ぶぶ漬け、いただきます?
「ニンゲン、尊敬語と謙譲語を混ぜるのはいけません。誤字報告が来てしまいます」
アンタも相当メタいこと言ってるけどね。
「実際問題、どうやって帰るのよ。アンタ、大気圏突入機能付いてたっけ?」
「その機能付いてたら生き物諦めてません?」
悪魔なら、大気圏突入くらいできそうだから。
悪魔は私の頭にスリッパを乗せてくる。どこから出した。
「まったく。ニンゲンはボクの事を何だと思ってるですか。なんでも出来る、すぅぱぁ可愛いと思ってるですか」
やっぱり流れ星と一緒に帰還させようかしら。
「冗談はさておき。ニンゲン、スマホ持ってます?」
なによ、出し抜けに。
「こんなところで電波届くわけないじゃない」
眼下に見えるは母なる青い星。近いと言えば近いけど、電波って確か地上に飛ばしてるって聞いたことあるけど。
「役立たずですねぇ」
よかったな、宇宙で。殴っても反動付かなくてそんな痛くないから。
ぴるるるるるっ。
このタイミングで似合わない電子音。
「悪魔、スマホ鳴ってるよ」
「ボクのじゃないですよ?ニンゲンのじゃ?」
お互い首を傾げる。
『……ミ君!ニン……さん!』
聞こえてくる電話を通したような声。目の前にあるわざとらしい角。
「悪魔、出なさい」
「ニンゲンが呼ばれてます」
『どっちでも良いので出なさい!!』
羊がキレた!
『ようやく見つかりました!さぁ、地球に帰りましょう!』
「出てないのに」
「通話できるですー?」
『助かりたくないんですか、アンタたちは!!』
なんで手で持ってないのに左右に揺れてるのさ。
『このコマンドを角に打ち込んでください!上上下下……』
「羊、ストップ」
ウチらはちゃんと帰還した。
コマンドは皆まで言わなくても知ってるよね?




