悪魔がウチにおりまして・677
ウチには悪魔がいる。
粉チを山盛りにしている悪魔が。
「ぱさちゃん、これくらいでいいですかー?」
「連れてくー」
「ウエイなさい、悪魔」
言語崩壊が起こるくらい動揺してしまった。
「ニンゲン、どうしました?」
「連れてく?」
緑と白の毛玉が首を傾げて……あぁもう!白に首は無いじゃない!
「緑、白を飼うとは言ってません」
「ニンゲン、毛の色で指摘するのはちょっと失礼です」
黙らっしゃい、角緑。
「この子も生きているです。ご飯を食べねば高楊枝なのです」
その表現ならご飯抜きなのよ。
「ご飯は万里を譲って許しましょう」
「歩数ですらないのですね」
「そんな粉チーズをふんだんに使って何をする気ですか、この子をグラタンにするのですか」
確かケサランパサランの主食は小麦粉だったはずでしょう?
「ニンゲン、世事に疎いのですか?最近小麦粉は高いのですよ?」
腕を組んで踏ん反り返ってるけど、グラム単価なら粉チの方が絶対高いわよ?
「連れてく?」
白毛玉は山盛り粉チを指でつまんで……指で?つまんで?
「悪魔、この子、手が生えて見えるのは気のせいかしら?」
「気にしてはいけません」
悪魔ケサパサを見ないようにしている。見ろよ、現実を。
「連れてくぅ」
手の生えてる毛玉は粉チを指ですりすり、何かを確かめている。
あ、食べた。
「どうでも良いけど、連れてくしか言わないのになんとなく言葉がわかるの、バグるよね」
「そもそも、あのサイズのケサパサはたぶんケサパサじゃありませんし」
悪魔も初めて見たんだもんねー、それを飼おうなんて思わないでねー。この子、モグラに渡そうねー。
「ニンゲン、さらりとぱさちゃん持ってるニンゲンもそこそこアレです」
アレってなんだ、皆まで言うてみい。
「連れてくぅ、連れてくぅ!」
「はいはい、チーズ美味しいねぇ」
お預けされた毛玉はじたばたして降ろすことを要求してくる。
「……ニンゲン扱いぱねぇ」
アンタたちのせいだろうに。
解放されたケサパサ、粉チーズの山に頭から……頭しかないんだよなぁ。
「ニンゲン、飼っちゃダメですかぁ?」
「どうせコイツ居続けるでしょ」
「連れてくっ!」
ウチには異形がたくさんいる。
「このように座っても怒りません」
悪魔をダメにするクッションが増えただけかもしれない。




