悪魔がウチにおりまして・676
ウチには毛玉がある。
楽しそうに揺れている毛玉が。
『ケサランパサラン?』
狐からこの毛玉の名前を聞いたとき、思わず悪魔とハモってしまった。
「左様。幸福を呼ぶ精霊とちて名高い、あのケサランパサランです」
狐の真剣な顔。揺れる毛玉。つつく悪魔。止めな、危ないから。
「信じろと?」
「……某も自信がありません」
自分信じてこー、大丈夫だよ、その調べた方法が間違ってただけだからー。
「連れてく?」
見えてない、見えてない。
悪魔につつかれながら会話に混ざってきたケサランパサラン(仮)なんて存在しない。
「ニンゲン!コイツ、動くです!」
え、アンタが動かしたんじゃないの?
「違いますー、ボクがつついてたら逆方向に寄っていったですー」
喋る上に動くのかよ、コレ。
「ニンゲン殿、こう見えても幸せのかたまり、邪険に扱ってはいけません」
「連れてくっ」
そうは言っても狐ちゃん、この毛玉さっきから「連れてく」しかいいませんよ?
「ぱさちゃん、どこに連れていってくれるですー?」
めっ!悪魔めっ!名前付けちゃいけません!
「ニンゲンさん!毛玉の正体がわかりました!ケサラン以下略!」
悪魔がそそのかされそうになってる時に羊がクローゼットから飛び出してきた。
「それ、狐ちゃんから聞いた」
「羊殿、お仕事遅いですねー」
狐が煽った、だと!?
「違います、それケサパサだけどケサパサじゃないのです!」
ちょいゲシュタルトさん崩れそう。
「このケサパサ、幸せに誘うのはそうなのですが、悪しきものは連れていって時空の彼方にぽーいするのです!」
な、なんだってー!……それって悪いの?
「ニンゲンさん、考えてもみてください。私たち、普通に悪しきものです!」
………………そっか、自覚あったんだ。
「それでさっきから悪魔のこと口説いてるわけ?」
「連れてく?」
「行くですー……」
「ミミ君!そっちに行ったら納豆もピーナッツ味噌もありませんよ!」
謎の食材出てきた!?
「ピーナッツ味噌……いけません!アレをちゅーちゅーする快楽がない世界なんて!」
正気に戻る悪魔、気になる食材の謎は深まっていくのでした。
ウチには毛玉がある。
コイツ残るの!?




