悪魔がウチにおりまして・674
ウチには悪魔がいる。
ベランダから落ちて行った悪魔が。
え?突き落としてないよ?
ちょっと待ってね、説明するから。
「ニンゲン!空を自由に飛びたいのです!この翼で行ってきます!」
で、落ちました。私に罪はまったくないでしょう?
「ニンゲンー……、飛べないのですー……」
あれ?でもこいつらのラジオ体操に飛べるのなかったっけ?
「悪魔、フンボルトペンギンの運動は?」
悪魔、無言になる。頭を抱えて何かを思い出しているようだ。
「悪魔体操、手を腰に当てて浮く運動ですか……?」
確かそれそれ。
「ニンゲン?ペンギンは飛べないのですよ……?」
なんでさっきベランダから落ちたヤツに可哀そうな物を見る目をされているんだろう?
最近悪魔を殴り過ぎている気がするから話を聞いてあげましょう。
「なんで急に飛びたくなったのかなぁ?思春期かなぁ?」
「ニンゲン、ニンゲンたちは二次性徴を迎えると空を飛びたくなるですか?精神状態、大丈夫ですか?」
前言撤回。甘やかすと良いことはありませんね。
通販で鉄ゲタ買っておいてよかったー。
悪魔の片方の角にゲタをふたつ縛り付ける。
悪魔は首を右に傾けながら理由を話してくれる。
「昨日、コウモリ悪魔選手権を見まして」
こっちの世界にもあるわね、琵琶湖越えるやつ。
「アレくらいならボクもできると思ったんですが……」
実際ペンギン体操の時飛んでたからね。
「ミミ殿、こちらの世界で空を飛ぶことはできませんよ」
あくびをしながらアヒージョに火入れをしていた狐が近寄ってくる。
「ほわい、きつねーずふぉっくす!」
あー、頭痛が痛いわよ。
「こちらの世界では神素が少ないのです。あちらであれば簡単に飛べるのですが、こちらはカロリーの爆弾です」
空飛ぶことをあんドーナツみたいに言わないで欲しい。
「なるほど!それならあんドーナツ食べれば飛べますか!」
この悪魔と考え方が一緒で癒せない傷を負いました。
「……物の喩えというのは難ちいですね。すぐにお菓子と結びつけるのはミミ殿くらいですよ」
狐!流れ弾!流れ弾ぁ!
「おや、ニンゲン殿?こめかみをグリグリちていかがなさいまちた?」
「続けて」
今、話を振られてしまうと帰って来れなそうだから。
「ニンゲンもあんドーナツ食べたいです?」
キミのように勘の良い悪魔は嫌いだよ。
うぱがテンション高めにあんドーナツ持ってきてるんですが?
「良いタイミングですー!うぱちゃん、一緒に食べましょー!」
ウチにはあんドーナツがある。
……いつの間にうぱの持ち物が物理になったのかは気にしないようにしよう。




