悪魔がウチにおりまして・667
ウチには悪魔がいる。
ピンクの剣を構えた悪魔が。
「やぁやぁやぁ!この名を知らぬとはまさか田舎者かー!」
堂々たる名乗りを上げる悪魔。
コーンフレークを食べるうぱ、だし巻きをつつくクモ。
そしてみそ汁をすする狐。
誰か反応してあげなさい!
「悪魔、ご飯の時は静かに」
たしなめると悪魔はぶわっと涙を流す。
「ボク……見えてるんですね……あまりにも、あまりにもみんなが反応が無くて……」
ここまで追い詰めるほど無視してたの!?
「ミミちゃん、30分間ずっと叫んでて……逆に声かけられなくて……」
狐もうつむいて目を合わせない。
わかるけど、わかるけど!
「とりあえず、その剣しまいなさい」
「この剣は名剣ヒポポタマス!しまうわけにはいかないのですー!」
……なんか、剣に付けない名前出てこなかった?
「とある魔獣の素材を使い、鍛え上げたこのつるぎ。さぁ!ニンゲンは手に取る資格がありまするかー!」
確かにこのテンションだったら無視するわ。
「とりあえずお借りしまーす」
ひょいっと剣を受け取る。
悪魔がなんかみーみー騒いでる。
「これ、お肉?」
ピンクの部分を見ていると金属ではないっぽい。
「ぶっちゃけ、それ魔界カバの肉を寄せた非常食なのです」
食べ物で遊ばない!
「この剣は打ち据えて、戦いを共にし、最後に感謝しながら食べるものです!ゆえに!この使い方がこの子も本望なのです!」
悪魔が見栄を切りながらこっそり剣を受け取る。
「で、ニンゲン。今夜の晩ご飯コレにしてほしいんですけど」
冒険してあげろよ。
「……これって丸ごと調理?」
「火にかけると柔らかくなるので、そこから切り分けですね」
武器として欠陥がひどくない?
「ニンゲン殿、加工の段階でお塩をふんだんに使ってます。水にさらして塩抜きする必要があります」
これってサラミか何かなの?
「えー、ボクはこのしょっぱいのがいいのにー」
「ミミ殿、万人が受け入れる濃さではないのです」
悪魔と狐が剣の調理方法で揉め始めた。
「ニンゲン!どっちにするのですか!」
「ニンゲン殿、ご決断を」
「……食べたくないんだけど」
たまにはちゃんと断るの、大事よね。
ウチには剣が転がっている。
「これさ、切るのに使ったら塩味付けられない?」
「確かに!!」
この意見、採用なの!?




