悪魔がウチにおりまして・663
ウチには悪魔がいる。
そうめんをじっと見ている悪魔が。
「ニンゲン。そうめんと冷や麦はどこが違うのですか?」
「……太さ?」
そんなこと考えたことが無かった。
「ニンゲン殿、概ね合ってますが作り方も違うようです」
狐がスマホをスワイプしている。
「そうめんは油を塗りながらヒトの手でよじるそうな」
うわ、そんな手間かかるんだ。
「そうめんが高いのは納得だね」
「そうですねー」
狐とのんびり話していると悪魔がぶっこんでくる。
「うどんとラーメンは何が違うですか?」
「根本」
さすがにその違いを説明するつもりはない。
「ニンゲンー、分からないと言っている相手にそれは無いんじゃないですかー」
「質問の質によるでしょ。天使と悪魔の違い教えてって言われて真面目に答える?」
こんな当たり前なことを聞かれても……アレ?
「むぅ、その質問はなかなか難しいです」
「ニンゲン殿、上手い返ちです」
なんか誉められた。
「え、天使と悪魔って全然違うんじゃないの?」
「良い質問です、ニンゲン」
悪魔がメガネをかけてキリっとしている。
「実はボクたち悪魔の祖先と天使さんたちの祖先は同じなのです」
あー、なんか聞いたことある。
「神ちゃんたちを裏切ったのか、伝説のご先祖様、ルシファーなのですー」
ルシファー……どこかで名前を聞いたことあるような。
「ねぇ、そのルシファーって今どこにいるとか分かるの?」
質問にキョトンとする悪魔。
「ニンゲン、どれだけ昔のことと思ってるです?あくまで伝説のお話ですよー、悪魔だけに」
やかましい。ただ、そのルシファーって名前、どこかで聞いたことあるんだよなぁ……。
「ねぇ、風貌とか分からない?」
「えっとー、うさん臭い笑顔って伝わってます」
それ、敬意無くない?
「割と声が高めで、アニメだったら裏切りそうって言われてます」
神を裏切ってるから納得なんだけど。
「あ……。もしかして、歯医者とか」
「ニンゲン?ご先祖さまをあんな魔物と一緒にするなら戦争ですよ?言って良いことと悪いことがあります」
言葉の途中、悪魔が突進してきて顔を密着させる。
「いいですか、ニンゲン。アレがご先祖さまのわけありません。嫌です、ボクが嫌です、良いですね?」
悪魔のお気持ちだけど、普段見せない圧力は結構怖かった。
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲンさんもお気付きになりましたか」
羊、正体知ってたの!?




