悪魔がウチにおりまして・661
ウチには悪魔がいる。
あ、スマホが飛んでいった。
「むきー!!」
自分のスマホを放り投げて、クッションに被弾。
つまりは割と冷静ということ。
「悪魔どうしたの?」
「続きはWebで!」
ここがWebだよ。
「そうじゃないのです!なぜニンゲンは良いところで課金を求めるのですか!」
それは同意するけどスマホ投げちゃダメでしょ。
「さっき、ウェルカム・トゥ・パストを見てたです」
またギリギリの名前を攻めおって。
「で、そのバック・トゥ」
「ニンゲン!?なぜそんな無謀なことをするですか!?」
まさかこのあたりで悪魔に叱られるとは。
「それで過去に戻るやつ、どこで切られたの?」
「なんか、博士が拳銃で撃たれたところです」
切る場所早すぎない!?
「そうしたらやたら豪華に『続きはWebで』って」
確かにそれは怒りたくなるかも。
「ニンゲン、ニンゲンを滅ぼして良いですか?お金にがめつい種族なんて生きる価値など」
映画ごときでそこまで起こるヤツにがめついと言われましても。
「ミミ君、そんなことではジェントルには程遠いですよ」
羊は納豆をまぜまぜしながら悪魔に声をかける。
「腐り豆ー!」
羊に突撃しそうな悪魔の首を掴んで止めておく。
「ニンゲンさん、カラシとネギが少なくなってました」
ご報告どーも。
「さて、ミミ君。ジェントルとは何が起きても取り乱さないもの。心頭滅却すれば火もまた涼し、立派な紳士になるには何事にも動じない心を持たないと」
おぉ、羊が珍しく良いこと言ってる。
ただ悪魔は目を細めてじーっと見ている。
「ミミ君、なんですか、その目線は」
「だってー、羊さん昨日タコ墨塗りで奇声あげてたぶはっ!」
悪魔の眉間にコルクがめり込んでいる。
「ふっ……いけないいけない、ついカッとなってしまいました」
羊は手に持ったコルク銃の発射口にふっと息を吹きかけた。
「羊、飛ぶものは危ないでしょー」
「問題ありません、この距離では外しませんので」
「問題大ありですー!」
悪魔が飛び起きる。その額にまだコルクがめり込んでいる。
「なんですか、この威力!下手な本物より重いです!痛いです!」
未だに剥がれないものね、コルク。
「そんなこと……あ、威力42倍になってました」
悪魔じゃなけりゃお陀仏よ!?
ウチには羊がいる。
「はーい、羊さん、行きまーす」
「ミミ君!逆!上がってます!威力上がってます!」
悪魔に自業自得されてる羊が。




