悪魔がウチにおりまして・660
ウチには悪魔がいる。
クモと正面向き合っている悪魔が。
「悪魔、ケンカ?」
「違いますー」
なら、放置して眺めておきましょう。
どうやら、悪魔と蜘蛛でチェスをしているようだった。
「く、クモちゃん!その手は待つですー!」
悪魔の悲鳴虚しく、クモは手に取った駒で白い駒をズラす。
「く、くぅ!もう手が無いのですー!」
悪魔の断末魔を受けてクモは両手を上げてぴょんぴょん飛んでいる。
「終わったー?」
「まだです、まだ終わらんのです!」
チェスとは違うのだーとか言い出さないか心配です。
「クモもチェスできたのねー」
感心しているとクモは首を振った。
スケッチブック書き書きして「みみちゃんからならった」
「悪魔、教えたのに負けてるの?」
それだとしたらクモすごいんだけど。
「ち、違うのです!クモちゃんの戦術がすごいだけで!」
うん、それを誉めてるんだって。
クモは頭を掻きながらほんのり照れている。
「でも、天使は?アイツと昔チェスを……」
「ニンゲン、それ以上はいけません。天使さんギャランティの関係で出演が困難になったです」
天使、出演にギャラかかるの!?
「なんか、仲良くしているのがバレて叱られたらしいです」
コイツとそのリスク背負ってまでチェス打ちに来てたの!?
「なのでクモちゃんに教えました、勝てません、なんでですか」
悪魔の目のハイライトが消えていく。
そりゃ教えたばかりのクモに負けてたら悔しいでしょうよ。
「こうなったらニンゲン!クモちゃんと一局」
「いやよ?」
悪魔が頭からヘッドスライディングした。
……頭からするからヘッドスライディングか。いけない、いけない。
「なにゆえですか!にむげむ!」
古めかしい言葉遣いをするんじゃありません。
「だってルールわからないし。何なら作者も」
「ニンゲン!次元の壁は越えてはいけません!タイムパラドックスが起きてしまいます!」
アンタ、結構越えてたけど起きてなくない?
「羊は?できそうだけど」
「羊さんは、神ちゃんのところに菓子折り持っていってます。天使さん連れ出してごめんねって」
それ、アンタが行かなくていいの?
「良いのですっ!ほら、神ちゃんと羊さんだから菓子折りで済んでる部分があるのです」
身内のしでかしたことってことね。
「……羊に謝りなさいよ?」
「……羊さんに回らないお寿司請求されてます」
しっかり悪魔も叱られてるじゃん。
ウチでは寿司パーティが行なわれている。
桶が20個、悪魔は泣きながら食べていた。




