悪魔がウチにおりまして・656
ウチらはニワトリを追いかけている。
なんでこんなことしてるん?
「ニンゲン!そっちに行ったです!」
悪魔の声の方を向くと翼を広げたニワトリが叫び声を上げながら突撃してくる。
「もう!ちゃんと捕まえてよ!」
こちらも手を広げ、抱きかかえるようにニワトリに飛びついた……。
ここはモグラの農場、そんなところでなぜニワトリを追いかけているのか。それは、2時間前に遡……。
「ニンゲン!回想してるくらいなら1匹でも多く捕まえるです!」
状況説明もさせてくれないのかい!
「ふっふっふ。今ニンゲンさんが捕まえたニワトリは最弱。しかしボクの農場のニワトリは種としては最強!」
高台で腕を組んだモグラ。
許されるなら突き落としてやりたい。
「ほらー、逃がしたのですからキリキリ捕まえるー」
ちくせう!
「なんで私がこんなことを!」
「ニンゲンが逃がしたからです!」
思い出させないで!回想中にテキトーなこと考えて悪魔に擦り付けようとしてたのに!
「邪心が飛んできました!ニンゲン、あとでカツ丼尋問です!」
こんな走り回ったあとカツ丼なんか食べたらお腹おかしくなるわ!
「というか、このニワトリ逃げてもいいでしょ!」
「それがーダメなのですー」
モグラが高台からメガホンでなんか言ってる。
「その子たちーニンゲンの世界から連れて来たのですー。特定外来種ですー。逃げたら、全部駆除されちゃいますー」
『こけー!?』
ねぇ、このニワトリたち言葉わかってない?
「モグラー!」
「タヌキですー」
空気読んで!そーゆー状況じゃないから!
「このニワトリ、悪魔がオスメス分けてたやつらー!?」
「そうですー」
最初に言え!
「ヒヨコー!!」
『こけー!!』
よし、返事した!
「小屋戻るー!!!」
『こけーーー!!!』
ニワトリたちは敬礼して列を成し、小屋へと向かっていく。
呆然としている悪魔とモグラ。
「なに!」
乱れた息を整えながら、2匹を睨む。
「ニンゲン、最初から、なぜ最初から気付きませんでした……?いい大人が、2時間、2時間走り回ったですよ……」
「モグラに言え!!」
ウチらは農場にいる。
えぐえぐと泣き続けている悪魔は放置です。




