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悪魔がウチにおりまして・653

ウチには……。

あー、ダメだ。


「ニンゲン、湿布です」

悪魔が湿布とテープ、切るためのハサミを渡してくる。

「ありがと、背中、貼って欲しいなぁ」

「甘えるなですー。腕を伸ばす運動をしていないせいですー」

ゴメン、こっちの世界とアンタの腕を伸ばすって意味が変わる気がする。

「ミミ殿、ニンゲン殿の背中はふくふくと大きいのです。手伝って差ち上げましょう」

狐ー、治ったらしばくねー。

首を反対に向けるとまたピキってきてしまった。

私の今の状況を言うなら、寝違えて、背中吊って、ぎっくり腰でタンスの角に小指をぶつけた感じ。

なんでこんな筋という筋を痛めつけてるのか、まったくわからないんですが。

「ニンゲン、日ごろの行いが悪いからー」

くぅ、健康だったら足蹴にしてやるのに!

「目は口程に物を言うと申ちますが、ニンゲン殿の目は同居ちている者に向けていい範囲越えてますな」

狐は湿布にハサミを入れて、いいサイズに切ってくれる。

「大丈夫、狐ちゃんには向けない」

「良い心がけです」

「ニンゲンもごんちゃんもやっべい話は当事者いないところでしません?もしかしてボクの事見えてなかったりします?」

大丈夫だよー、悪魔ー。

ちゃんと見えてるからヘッドスピンするなー。埃舞うでしょー。

天井にいたクモが悪魔に糸を絡めて縛り上げている。

「クモー、ナイスー」

幸い腕は動く、サムズアップくらい……あー!

背中、ピキってきた!腕と背中、繋がってた!

「ときどき思います。ニンゲン殿、実は阿呆で?」

狐!アンタのその目も店子に向けて良いものじゃないよ!

「さて、と!」

べしんって貼るな!響くでしょ!

「とりあえず応急処理は完了です。今日はゆっくり寝ていてくださいね」

「このもぞもぞ動いてる糸玉、置いていくの?」

「縛られているので害は無いでしょう、では、ゆるりと」

狐!クモ!この子も連れていきなさい!

「ニンゲンー、まだ遺体ですかー」

「その言い方、私死んでなきゃいけないけどね」

まだってそっちでは生き返るのがデフォなのか。

「早く生き返るですー。ニンゲンのご飯が無いとお腹減るですー」

「自分で作りなさいー」

それ以上、悪魔は何も言わず左右に揺れている。

「抜けられないの?」

「結構かかりそうです。ニンゲンが治る頃には抜けられると思います」

……まぁ、良いけど。


ウチには悪魔がいる。

心配の仕方がひねくれてる悪魔が……ありがとね。

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