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悪魔がウチにおりまして・643

ウチには悪魔がいる。

クルクルのカツラを被っている悪魔が。


「ヒトノーコ・タカラダ。これから宮殿に行きましょう」

「悪魔、どした?あと、妙に本名呼ぶんじゃない」

周囲を見回すとなぜか中世な雰囲気になってるだけど。

「ボクの名前はアクマーガ・カナデール。宮廷音楽家なのです」

「アンタ、演奏なんかできたっけ?」

「オカリナなら吹けます」

そういえばそんな設定あったわね。

「というわけで、宮殿ですー」

「ご都合主義……」

「今さらです」

高らかに鳴るファンファーレ。

コイツが宮廷音楽家だったはずでは?

「国王さまの、おなーりー」

やる気なさげな牛がおざなりな宣言をすると玉座の天井がパカっと開いて羊が落ちてくる。

「ミミ君!よく来ました!」

「ニンゲン、帰りましょう」

「ヒトノーコじゃなくていいの?」

「やってられんです」

悪魔、クルクルカツラを床に叩きつける。

「羊さん!」

「国王って呼んでくださいー」

牛!せめて葉巻を吸わずに言いなさい!

「羊さん!どうやって国王になったですか!無銭飲食ですか、ネコババですか!」

悪魔が玉座からずり落ちる。

「なんでそんなみみっちいことをして国王になれるんですか」

「だってー、羊さん王様の器じゃないじゃないじゃないですかー」

悪魔「じゃない」が1個多い。

「ミミ君!忘れています!私はこう見えて」

「私の権力使ったのよー」

あ、神ちゃん。ちっすちっすー。

「羊さん!?王様になるために神ちゃんと結婚したのですか!玉の輿ですか!婿入りなのですか!」

「あなた!私のことを利用してたの!私の純粋な気持ちを返して!」

「それを言うなら私の味覚を返してください」

神ちゃん、立ち上がって!耳を抑えてしゃがみ込まないで。

「ニンゲン、なんか疲れましたー。帰りましょー」

悪魔!飽きないで!私を置いていかないで!

この野郎、本当に帰りやがった!

「……いいですよー、たまにはこーゆーオチ無しで。ニンゲンさん、現実にお帰りくださいな。出口はあっちです」

牛、ありがとー……。今度冷麺奢るねー。

「牛に冷麺って合ってるんですかね?それじゃー」


目を開けると見慣れた天井。

「……どっと疲れた」

音の外れたオカリナがこんなに嬉しいとは思わなかったよ。

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