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悪魔がウチにおりまして・642

ウチには悪魔がいる。

カレーを混ぜ混ぜしている悪魔が。


「この季節のカレーは美味しいですー。ニンゲン!お替わり!」

「自分でやりなさい」

ご飯をよそるくらい自分でやりなさい。

「ところであの犬は?」

昨日まで確かデカい仔犬が居たはず。

「今朝ミノちゃんが連れて帰りましたー」

なんでよ!こういうのってお別れ回するものでしょ!

「何言ってるですか、ニンゲンー。小説やアニメじゃあるまいし、おるちゃん帰るくらいで……くらいでぇ」

泣くなよー、アンタがあの子好きだったのはわかってるからさー。

「また来るって言ってくれたです、いつでも会いに来て良いって……でも、でもぉ!」

カレーに雫を垂らしながらかっ込む悪魔。

「汚いん……」

隣で狐が引いてるんですけど、それは言ってやるなよ。

「ごんちゃんは冷静過ぎるのです!昼夜を共にした友だちと別れる辛さを知らないのですか!」

「元々ミミちゃんの飼っていた子ではないでしょう」

狐がジャガイモを割って口に運ぶ。

「飼ってません、友だちです!」

この価値観って相容れないのよねー。

言い争ってるふたりに対してクモがスリッパを構えて飛び掛かる。

悪魔の頭をスパーンっとぶっ叩く。

「く、クモちゃん?乱心ですか?」

クモはプラカードに「せわしてからいえ」と書いて悪魔に突きつける。

どうやらあの犬の散歩をしていたのは悪魔ではなくクモ。

家の中では構っていたみたいだけど、面倒なことはしていなかったらしい。

「そ、それは、適材適所というか……」

「クモ殿の言う通りです。暑い中おるちゃんのお散歩ちてくれたクモ殿にこそなく権利があります」

狐がビシりとスプーンを悪魔に向ける。

行儀悪いから辞めなさい。

「クモ、会えなくて寂しくないの?」

クモはプラカードにペンを走らせる。

「ぽんちゃんのぼくじょういく」

やっぱり寂しいは寂しいのね。

「クモちゃん、その時は誘って欲しいですー!」

どの面フレンズだよ、コイツは。


ウチには悪魔が……。

「きたー」「ごはんー」

「おるちゃ」

「帰れ!」

これ以上居候増やしてはなりません!

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