悪魔がウチにおりまして・638
ウチには作者がいる。
ねぇ、なんで?
「作者ー、生きるですー」
ぶっ倒れている大男を悪魔がゆさゆさしている。
「ねぇ、なんで?」
次元の壁を越えていい人じゃないでしょ、ソレ。
「作者とお酒飲んでたです」
悪魔がゆさりながらこっちを向く。
「それで」
「倒れたです」
「ヤバいじゃないの」
救急車呼ばなくて平気なの?
「この作者、お酒でよく倒れるのです。なんならここに有る傷、お酒で倒れた時にペーパーホルダーにぶつけたそうで」
本当のことだからイマイチツッコみづらいのよ。
「ほら、作者ー。水飲むですー」
悪魔がペットボトルの水を飲ませる。
「すまんこってす」
喋った!?
「それは喋るでしょう、これでもニンゲンですよ?」
「最近怪しいって言われます。こうして悪魔と話してるんで」
創作物だから大丈夫です。
「ちなみに今、私は倒れる寸前でこの小説を書いてます」
だから辞めなさい、メタ発言。
読者が心配するでしょう。
「作者はお酒弱いのに飲むです、バカなのです」
コレを書いているのもご本人なのがシュールよね。
「ワインはいけない、つい飲みすぎてしまう」
虚ろな目で言うんじゃない、それより反省なさい。
「ヤマは越えたので。さっきトイレで吐かせてきました」
悪魔、思った以上にしっかり介抱していて偉い。
「だって作者に死なれたら、ボクらも消えるですよ?それは困るじゃないですか」
悪魔も今日は壁を越えることに躊躇ないな。
「すまんこってす。スパークリングワインがね、残っちゃったの」
それを全部吐いていたら飲まない方が良かったのでは?
「作者、これ以降お酒控えるです。あと60年生きて、元号5つ経験するんでしょう?」
本人のほのかな野望をばらすんじゃありません。
「ねぇ、この作者追い出せない?」
デーンとリビングに寝られてると邪魔なのよ。
「人の心ー」
「ニンゲン、出番減らされますよ?」
「主役を排除しないでしょ」
『え?』
「え?」
この物語の主役、私じゃなかったの?
ウチには悪魔がいる。
「語り部が主役は無いです」
「でも、このニンゲン居ないとキミに対してのツッコミ消えるんだよなぁ」
とりあえず私が出続けるのは確定したようです。




