悪魔がウチにおりまして・637
ウチには悪魔がいる。
マイマイを引っ張り出した悪魔が。
アクマイマイ。
主に冬に出没し、悪魔を頭から食べるそれはそれは残酷な……。
「ニンゲン殿、堂々とウソを吐くヒト好きじゃありません」
狐が冷やしあめをくるくる回しながら目を細める。
わかったよー。
アクマイマイ。
悪魔が寒い時にかぶるカタツムリ型の寝袋。
なぜか頭から埋もれていく悪魔は、まるでマイマイカブリのようだから、私が勝手に呼んでます。
「寒く、ないよね?」
「ですね」
狐は結露したグラスをカラカラと回す。
うん、涼やか。
「悪魔ー、なんでマイマ……さっむ!?」
悪魔の部屋に入ると冷気……ってか寒風が足元をヒヤッとしてくる。
「ニンゲン!早く閉めるです!冷気が逃げちゃうですー!」
「エアコン!止めなさい!」
悪魔の部屋のエアコンを強制遮断。なんならコヤツはマイマイに包まってやがるし。
「何度にしてるの!」
「14度ですー」
ヤロウ!リミッター解除して限界突破させやがった!
「寒いん……」
私の声を聞きつけた狐が寄ってきて震えている。
「ミミ殿、光熱費は請求するとちて。こんな寒くする必要あります?」
電卓を叩きながら悪魔に突きつけている。
こういうのを大家さんがやってくれるのはありがたい。
「なんぼでも出すです。今年の夏は殺しに来てます」
それには同意。
「だけど14度はやり過ぎ」
真夏に寒くてマイマイ出してきてるじゃない。
「この寒い部屋でアツアツのおでんを食べるのがオツなのです」
おこたミカンのノリでおでんを食べるんじゃない。
「そうですか。ミミちゃんにはアツアツの鍋焼きうどんを作ってあげましょう。さよう、具はトウガラシとハバネロ、練りからし味でどうでしょう」
狐、地味な怒りが漏れてるよ。
「やですー!鍋焼きは海老天とワカメ、エノキと卵ですー!」
悪魔、その鍋焼きは是非食べたい。
だけど今じゃないかな?
「とりあえずマイマイを回収です」
狐、手を合わせると悪魔を浮かせてしゅぽーんっと引き抜く。
この前から狐、力使いすぎでない?
「さ、寒いっ!誰ですか!こんな寒くしたのは!」
アンタだよ。
ウチにはコモンずがいる。
アクマイマイと戦っているコモンずが。
「やめるですー!破れるですー!」
なんで寝袋に入ったまま逃げられるんだ?




