悪魔がウチにおりまして・634
ウチらはモロコシ畑にいる。
さぁ、これから収穫です。
「我が妖刀・菊一文字が血に飢えているですー!」
悪魔は明らかに西洋の剣を捧げ、天を仰ぐ。
「ミミちゃん、ボクの畑をいたずらに傷つけたらその首、繋がらないものと思ってください」
「ほら、ニンゲン!謝るです!」
アンタだよ。
「ちかし、こんなに広大な畑なのに機械は使わないのですか?オートメーションは大事です」
狐が珍しく横文字を!
「もちろん、普段はミノさんが運転するハーベスターで収穫します。ですが今回はミミちゃんたっての希望、農業体験なので」
悪魔!モグラが困ってるから手伝うって言ったよね!
「ロスー」
巨大牛さんは手持ち無沙汰なのか、カゴをジャグリングして……意外と器用だね。
「ちなみに!今日採ったモロコシは食べていいのですか!」
目がトウモロコシになっている悪魔。
ここまで食い意地しかないと逆に安心する。
「食べて良いのは3本まで……それ以上は1本30円いただきます」
安い!?
「モグ、そんな安くて平気なの?」
「たぬです。卸し価格だとそんなものです」
卸し値で食べさせてくれるのか、太っ腹。
「至急買い占めですー!採りまくれー!」
「食べる分だけです。持って帰るなら1本100円にします」
それでも安いけどね。
「ところでぽんちゃん。食べごろの見分け方はどうすれば良いです?」
そうね、聞いておかないと。
「ヒゲを見てください。茶色いものが目安です」
「やろーどもー!茶色をもげー!」
悪魔の号令を受けてクモが散っていく。
ねぇ、飛んでない?気のせいだと言って。
「あのクモたちは元気ですね。ボクは小屋に戻って砂糖しょうゆの準備を」
「自分で収穫しなさい」
アンタが言い出した農業体験でしょうが。
「ミノさん、炭を集めておいてください。たぶんたくさん焼くことになります」
「サガリっ!?」
部位で返事をするな、ギャグ落ちには早いのよ。
日も傾き。
モグラの小屋で香ばしいモロコシの匂いが立ち込める。
「ややっ!こんなにたくさんのトウモロコシがっ!」
「羊さん、1本200円です。働かざる者、金を積め、です」
「殺生なっ!」
そう言いつつ羊はお金を払って食べていたんだけど……うまっ。




