悪魔がウチにおりまして・633
悪魔がウチにおりまして・633
畑にはモグラがいる。
麦わら帽子が似合う、モグラが。
「というわけで、ぽんちゃん農場のお手伝いですー!」
「なにもというわけって無いのよ」
いきなりこの炎天下の農場にサロペット姿で放りだされた私の身になってほしい。
「大丈夫です!日本の今より涼しいので!」
やめなさい、悪魔の世界よりも過酷な環境と思い出させないで。
「今日はよく来てくれました。これから皆さんにはばとぅーろわいやーをしてもらいます」
メンツが不穏!私、即負けじゃないの!
「ニンゲン、それは無いっす」
悪魔が手を振っているんだけど。失礼な、こんなか弱い女の子だというのに。
「戯言はさておき」
さておくな、モグラ。
「今日のターゲットはトウモロコシです。たくさん採ります、たくさん茹でます。終わったらモロコシ祭りです」
心なしか、モグラのテンションが上がっている。
「ミノー」
スルーしてたけど、この大きな牛さんはどちら様?
「我がもぐもぐカンパニー従業員のミノさんです」
「タウロスー」
繋げて本名言いやがった!
「迷宮にいなくていいの?」
「何を言ってやがります?ニンゲンさん。ミノさんは昔から我がもぐもぐティンパニーを手伝ってくれてますよ」
楽器にするな。怒られるから。
「それよりもぽんちゃん。早くモロコシ焼きましょうよー」
「ミミちゃん、まだ収穫すらしてません。もう少し空気を読むべきです」
ツッコミが、えぐい!
「タウー」
ミノタウロスがそれぞれにカゴを配る。
よくクモやうぱの背負えるカゴがあったものだ。
「コレいっぱいにしてください。入り切る分だけです。多く採り過ぎても出荷できないので」
ぱっと見、目の前に広がり続けるトウモロコシ畑。
「ちなみにそのカゴは肌身離さぬように。GPSが付いてますので迷子になったら回収します」
モロコシ畑で遭難?笑い話に聞こえるけど、こっちの世界だとあり得るのか。
「ちなみにミミちゃんのカゴにはつまみ食い防止策がされてます。生のまま食べないように」
「そんなことしません!ちゃんと、もいで茹でてから食べます!」
「……火の持ち込みも禁止です。一面ポップコーンにしたくありません」
モグラがあきれ顔で悪魔の身体検査をする。
コヤツなら引火させかねない。
「では、モロコシ採取、スタートです」
……え?続くの!?




