悪魔がウチにおりまして・628
ウチにはイモ虫がいる。
なぜか金ピカに光ってるイモ虫が。
「なんで?」
「みーが聞きてぇっす」
てことは自分から塗ったんじゃないの?
「どうです!?ご利益ありそうでしょう!」
鼻息荒く悪魔が「ででーん!」とスマホで音を鳴らす。
「これって金箔?」
「そんな!全身に金箔を塗られると窒息するって聞きました!」
金色のイモ虫がグネグネ動く。
とっても、気持ち悪いです。
「大丈夫です!ちゃんと模型用のスプレーにしてます!」
それもそれで身体に悪そうなんですけど?
「ていうか、吹きかけられてて気付かなかったの?」
「寝てる間にやりました!」
無許可じゃないの。
「そうなのです!起きたらこのように神々しく!」
なってないかなー、気持ち悪いかなー。
「ところでなんでイモ虫が金色?」
「最近お金周りで苦労してまして。昔から不幸が続いたら仏像に祈るじゃないですか」
悪魔が祈るなー?
「そ、そんな!みーがぷりちーふぇありーふぁんたすてぃっくだからって!」
言ってないよー?
この2匹相手にするとツッコミが足りないのよ。
「……スプレー、ちゃんと外でやった?」
「……昨日の今日でシンナースプレーなんかしたら、ボク追い出されちゃいます」
硫黄騒ぎからの狐ガン詰めだったからね。
「ボクはただ、温泉卵が食べたかっただけなのに……」
「そんなこと言ってるとまた怒られるよ?」
怒るっていうか、しつけというか。
「あんなに匂いが出るなんてボクも知らなかったのです……1度煮始めたらやめられないじゃないですか……」
コイツも知らなかったのか。だからって許されるわけじゃないんだけどね。
「そのミミちゃんの都合で金色になったみーの立場は!?」
珍しく正当性あるクレームだぞ?
「良いじゃない、派手になったんだから」
「みーは……陰なる存在……派手じゃダメなのぉ!」
面倒だな、コイツも。
「イモ虫さん、仕方ないので洗ってあげるで……うん」
うん?悪魔、スプレー缶を見て固まってるけど?
「ニンゲン、これって水性ですよね?」
悪魔が見せてきた缶にはしっかりと「油性」と書かれている。
「悪魔、謝ろ?一緒にいてあげるから」
「それ、移動してないだけですよね?」
ウチには金ピカのイモ虫がいる。
「ヒドイ……ヒド過ぎる……」
悪魔は土下座して謝り倒していた。




