悪魔がウチにおりまして・626
ウチには悪魔がいる。
雅さを捨てた悪魔が。
「ニンゲン!クモちゃんに負けて悔しいのです!」
昨日の俳句のこと?もはや勝負になってなかったでしょ。
「というわけで担当を呼びました」
気楽に呼ぶな、災厄を。
「アナタも仕事があるでしょう。会社にお帰り、ここから先は罪ある者しかいられません」
「けむの飼い主さん、それ暗に自分も罪人って認めてません?」
余計なことに気付くんじゃありません。どうせ私もこの悪魔と共に堕ちてます。
「というわけで!担当、文才ってどうやって育てますか!」
「才能」
悪魔泣いてるじゃない、やめたげなー。
「この季節に焼き芋3個で呼び出してそんなくだらないこと聞きたかったんですか?キレますよ?」
謝って!担当さんに謝って!
「えー、でも担当。この前スイートポテト欲しがってたじゃないですかー」
「手間と温度を考えなさい、ファッキン毛むくじゃら」
さらっと暴言吐いた!?
「そりゃそうでしょー。この季節にチゲ鍋出されるようなものですよ?」
好きな人はいるけどね、暑い時に辛いの。
「こんにちはっ!さようならっ!」
顔を出した羊の撤退は早かった。しかしそれよりも担当の投げ縄が早かった。……投げ縄!?
「なぜ私がこのような目に!?」
「ゴメン、ホルモン。つい反射」
モツ扱いするな、生きてるんだから。
「そうだ、仮にもアナタ職業作家でしょ?文字を書く上での注意とか、けむに教えてあげたらどうです?」
「それをするならまず縄を解いてくれません?」
諦めたように羊がため息を吐く。
するりと解ける縄。この担当、なんか特殊スキル多くない?
「そうは言っても私は感性で書いているので参考にならないかと」
「私が上手に手綱を……」
「アナタがしているのは締め付けです」
担当の手から飛ぶ投げ縄。躱す羊、捕まる牛。牛!?
「タイミング、悪過ぎません?」
「アレ、牛タンさまー。なんかお久しぶりですー」
「この流れだと絞められそうなのでちゃんと呼んでくれません?」
あれ?なんか距離感正常になってない?
「担当さん、牛いるのに暴走しないわね」
「ほら、私が好きなのは食材としての牛ですので、ミノさまは食べられないじゃないですか」
その境地、若干怖くない?
「私としてみたら、付きまといが無くなって助かってます。ほどいて」
ウチではお勉強会が開かれている。
「ほどいて」
縛ったまま放置されてる牛はどうしよう。




