悪魔がウチにおりまして・624
ウチには悪魔がいる。
指人形縫い縫いしている悪魔が。
「ニンベン、毛糸取ってくださいー」
また部首で呼ばれた気がする。
なんか煽られてこのままって言うのもアレだから。
「自分で取りなさい、幕間」
ふふん、これくらいの復讐は良いでしょう。
悪魔はなんかニヤニヤしてるんだけど。
「今、まくまと言いましたね、まくまと。ニンゲンー、それまくあいって読むのですよぉ?」
……ウソでしょ!?
「良いんですかぁ?ボクに漢字の読みで負けちゃってー」
腹立つ!この言い方と顔、腹立つ!
「で?なんで指人形なんか作ってるの?」
これ以上は引っ張られても面倒だから話題を変える。
「コレですかー?みんなの身代わりを作ろうを思って」
なんかいきなり物騒な話が出てきたけど?
「この世の全ては恨みつらみでできているそうなのです」
「……イモ虫!変なこと教えない!」
こんなこと言うのなんてヤツしかおるまいよ。
「みーになにか御用で?どうも、声を当てるのが難しいと評判のイモ虫です」
身内ネタをぶっこんでくるんじゃないよ。
「酷くありません?みーの声、誰が当てるか考えたときに出てくるヒト、レジェンド過ぎて使えないって話します?」
名前出すなよ、こんな場末の小説なんて吹き飛ぶからね。
「で?身代わりの件」
「あー、それですかぁ?ミミちゃんにテキトーこいたら信じちゃって」
それを当人の前で言える図太さ、羨ましいものがある。
「イモ虫さん!ウソなのですか!この世のすべては地獄なりってあの言葉は!」
そうであったら困るのは閻魔大王だろうよ。
「ミミちゃん、これでひとつ大人になりましたね。ヒトの言うことを簡単に信じない!みーはイモ虫ですけど!」
「ニンゲン!このド畜生を焼き払うです!」
勝手にやりなさい、巻き込むなし。
「ふっふっふー。身代わり人形はいただいていきます!コレを地中に埋めることで地域盤石の礎をしてやりましょう!」
あれ、意外と良いことしてない?
「くぅ!それでは全人類堕落計画が!ニンゲン、取り戻すですー!」
「やだよ」
どっちの手伝いするか、明らかじゃない。
「う、裏切るのですね!同じ釜の飯を食ったというのに!」
それ、イモ虫も同じだからね?
ウチには悪魔がいる。
「せ、せめてこの子は!この子だけはぁ!」
必至にクモの人形を抱きかかえる悪魔が。
そして上から嬉しそうな視線を送っているクモが。




