悪魔がウチにおりまして・622
ウチにはイモ虫がいる。
ウチ、というか私の肩にいる。
『今……あなたの鼓膜に直接話しかけています……』
それってこのメガホンで話しかけていること言ってる?
「ねぇ、割とウザい」
「直接言われるの新鮮!」
イモ虫はメガホンを折りたたんでお腹にしまい、肩から降りてテーブルでくつろいでいる。
「え?終わり?」
「みーはさっきのボケで満足です。たまに存在感を放っておかないと群雄割拠のゆるキャラ界、生き残りなど夢のまた夢なので」
絶対人気ナンバー2くらいの腰巾着してしぶとく生き延びそうなのが何か言ってる。
「ニンゲンさん!みーはそんなコバンザメのようなことはしません!やるなら中に潜り込んでうまうま汁をすするだけです!」
あー、寄生虫の方でしたか。
「納得!心外なり!みーは立派に悪事を働く者なり!……あ、やめて。ペペロンチーノソースは目に染みるので」
かけてません。食べ物を粗末になど致しません。
「アンタ、ソースかけても食べられないでしょ?」
「おのれ、エスカルゴ!キャラかぶってるのですよ!」
……いけない、いけない。
真剣にかぶってる要素を探してしまった。
「しかしニンゲンさん。ミミちゃんもごんちゃんもいないのにみーひとりでこの場を持たせるのにも限界があります。ふたりはいつ帰りますか」
なによー、私が悪いみたいなこと言うなー。
「悪魔は身体検査。カビから水虫発症したんだって。狐ちゃんは嫁入りの手伝いで天気雨降らせてくるんだって」
「ねぇ、普通にそっちの話の方が面白そうじゃない?みーと30度の部屋でグダグダ話してる場合じゃ無くね?」
え?そんなにあるの?クーラー掃除しないと。
「ねぇ虫」
「それ、結構ディスに聞こえます」
「じゃあイモ。クーラー掃除してよ、小さいから入れるでしょ?」
イモ虫は手を出す。
「なに、その手」
「お、だ、ち、ん。他者に頼むならそれなりの見返りを……ねぇ、なんで鍋にお湯沸かしてまするん?」
「断るなら茹でようかと」
「ありがたく手伝わせていただきます!」
よろしい。普段からご飯せびってるのに一丁前に対価を要求するほうが悪い。
「しかし、最近急に暑くなるの勘弁してほしいですよねぇ」
「身体の準備もできやしないわよね。マスクいる?」
「……なんでみーが付けられるマスクあるので?」
ティッシュねじっただけですから。
ウチにはイモ虫がいる。
ホコリで真っ黒になったイモ虫が。




