悪魔がウチにおりまして・621
ウチにはお姉がいる。
キッチンで味噌煮込みうどんを作ってるお姉が。
「おかしい!」
「なんでー?ちゃんとごぼうたくさん入れてるわよー」
そこもおかしい!
味噌煮込みにごぼうを入れるのなんて聞いたことありません!
「メノ、いーい?人生には大切なことが3つあるのよ。諦め、それだけで充分」
お姉!ひとつひとつ!どうしたの!?
「ニンゲン姉ー。味噌買ってきましたー。ごまみそは売ってませんでしたよー」
悪魔が背中に樽を……樽!?
「ありがとー。そこに置いておいてー……なんで樽?」
頼んだ本人も驚いてるじゃないの!
「コレが1番安かったです、グラム当たり」
実際の値段は高いでしょうね!
「私、使う分しか払わないわよ?」
「がってーむ!まぁ、ナスに塗るので大丈夫です」
「ナスと聞きました」
モグラがカゴ一杯のナスを持って現れる。
準備がよろしいようで。
「ミミちゃん、ナスに味噌、鉄板です。しかし今の季節のナスは水分が多いのです。そのため味噌などの調味料を付けず食べるのが……」
「モグラ!?」
あれ、初めてだったっけ?
「タヌキです。……あれ、ニンゲンさん、分裂しました?」
私とお姉を見比べて首を傾げる。
確かに髪の長さと服以外似てるけど。
「このモグラ、なぁに?祓っていい?」
「ダメです。そしてタヌキです」
譲らないな、このモグラ。
「メノ、不思議生物い過ぎでしょ」
「そうです、ニンゲン!気を付けるです!」
黙れ、筆頭。
「これだけ魔族に囲まれて正気を保ってるのもすごいわよねぇ」
え?コイツらそんな事あるの!?
「基本陰気だからねー」
「誰が陰キャですかー!」
絶対言ってないよ?
「ところでうどんはボクも食べていいのでしょうか?」
祓うって言った相手の作ってるうどん、普通にねだります?
「良いわよー。その代わりナスはちょうだいね?」
「ボクのナスー!」
悪魔がカゴを背中に隠す。
そんな悪魔を蹴り倒し、カゴを渡す。
「ミミちゃん、世の中は焼肉定食。美味しい料理が正義です」
間違って……ない気がしてくる。
ウチにはモグラがいる。
「味噌煮込みには、このネギを……」
「あら、良いわねぇ」
この子いるとウチの食卓潤うんだよなぁ。




