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悪魔がウチにおりまして・620

ウチには悪魔がいる。

黄緑に染まった悪魔が。


「悪魔、またカビてる」

「マジすか」

湿気の多い時期、すぐカビるんだから。

「ほら、風呂で落としてきなさい」

「あいー」

ウチには悪魔がいる。

カビがルンルンしている悪魔が。

「ここで終わるの、怠慢じゃありません?」

ウチに来ていた牛がソーセージをつまみながら文句を言ってくる。

「ニンゲンさん、いくら何でも普段の1/4で終わるのはどうかと」

「普段も何も、コレが悪魔との日常じゃない」

私たちの生活を見ている目なんかない、いいね。

「いやぁ、そうですけど。今日でミミさんと過ごして何日です?600……600!?」

なんでアンタが驚いてんのよ。

「そんなことよりどこからソーセージ持ってきたのよ。ウチにそんな太いの無いでしょう」

「もちろんドイツから。良いですよぉ、本場のフランクフルトは」

丸々としたソーセージをあんぐり口に運ぶ牛。

「共食いじゃない?」

「コレは、豚です……私、牛じゃないですし」

一瞬自分のこと牛と思ってないと出ない間なのよ、今のは。

「そんなことよりニンゲンさん。ミミさんと暮らしていて悩みなどないですか?」

牛はソーセージを咥えながらメモを取り出す。

「……なに?いきなり」

「ぶっちゃけ、ミミさんの素行調査です。まさかこっちで仕事してないのに住み着く悪魔なんかいなかったので」

「今さら?」

さっきも牛が言ってたけどもう2年くらい一緒に暮らしてるんだけど。

「ニンゲンさん、悪魔族の寿命考えてください。2年なんて体感2週間ですよ」

だいぶ盛ったなぁ、時間感覚。

「素行調査……いる?梅雨にカビる個体が素行良いとでも?」

「現地民の意見は重要なので。ぶっちゃけ上司にはすでに『必要なくねっす?』とは伝えてます」

相変わらず緩いなぁ。コイツもなんで罰せられないんだろ?

「周囲の方々との関係性構築も、立派な仕事と思うのです」

「それ、今風呂でカビ落としてる子にも伝えて?」

あやつのクレイジーに何度迷惑を……あんまり掛かってないな?

「ミミさん、懐に入り込む術が恐ろしく上手いですから。たぶん声のせいですね」

軽く風評被害になるよ?

「まぁ、これでニンゲンさんへの素行調査は終わりですねー」

何も聞いてなくない?

牛メモを見ると大きく「問題なし」とだけ書かれているのでした。


ウチには悪魔がいる。

風呂上り、毛が消えていた悪魔が……剃ったの!?

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