悪魔がウチにおりまして・619
ウチには悪魔がいる。
厨二炸裂している悪魔が。
「天の闇、地の光。海の灯火、雪の雨。我は求め、頂くものなり。我の叫びに応えたまえ!」
「……悪魔、大丈夫?熱は?」
あまりにも、あまりなことをしているからド突く前に心配になってしまう。
「ニンゲン!なぜですか!ボクが魔術を使うのは普通です」
それにしたって口にするのも憚られるような恥ずかしい言葉を並べていましたからね。
「それ、魔術なの?」
「転移の魔術ですー。来たれ!我が望み!」
悪魔が両手を振り上げると床にある紋章に向き合う。
紋章の真ん中から煙かこみ上げて部屋を包む。
「これ、毒じゃない?」
「たぶん平気です」
徐々に晴れてくる煙。そこに現れたのは……。
「カップ麺?」
ちょこんと紋章の真ん中には湯気立つカップ麺。
ちょうど食べごろのようでご丁寧に割り箸まで付いている。
「悪魔が欲しかったのって?」
「コレです。カップウルトラ」
やっすい名前だなぁ。
「ミミ君!またですか!」
羊がばたんと扉を開けて入ってくる。
「行ってるでしょう、魔法陣使うのも良いですけど、大抵ウチから飛んでいくんです!それなら素直に来てくれればいいものを!」
「なんで羊さん家からばかりなんでしょ?」
悪魔は悪びれもせずに召喚されたカップ麺を食べようと手を伸ばす。
「食べないで!私のお昼です!……趣味が近いせいじゃないですか?」
悪魔の手からカップ麺をひったくる。
「ボクのお昼!」
「私のです!」
醜い争いを……。
「この紋章ってそんなにお手軽デリバリーな代物だったの?」
悪魔がマットを巻いて紋章を片付けている。
「ですです。魔力を使うので誰でもできるわけでは無いのです!」
胸張ってるけどほぼ隣の羊の家から奪ってるんでしょ?
「歩いたほうが早くない?」
「まったくです!別に上げたくないわけでじゃないのです」
羊は腕を組んで悪魔に詰め寄っていく。
「だって羊さん、ボクが欲しいと言ったときすぐくれないじゃないですかー」
「今回みたく食べようとしているモノをねだるからですよ!」
魔術使って隣の部屋から強奪ねぇ……。
「悪魔ってアホ?」
ウチには悪魔がいる。
「ニンゲンがそんな暴言を吐くなんて……そんな子に育てた覚えは無いのです!」
アナタに育てられた覚えもございません。




