悪魔がウチにおりまして・618
ウチには悪魔がいる。
千円札を床に並べている悪魔が。
7枚の千円札を床に並べ、あぐらを掻いてじっと見ている。
お顔が書かれている面を並べ終ると、1枚1枚ひっくり返し、再び見つめる。
「増えないわよ」
あ、ビクッてした。
「しししししししし!知ってますし!」
動揺が、酷い。
「そんなにお金無いの?貸そうか?」
ここで甘やかすとクモとかへの示しがつかないから必ず借用書を書いてもらうけど。
「ニンゲン殿、もちかして借用書持ち歩いているので?」
狐が納豆を混ぜながら目を細める。
「持ってるわけないでしょう。なんとなく悪魔がお金の無心をしてきそうだと思ったのよ」
「それは既に予知と言います」
狐は手を振っている。
どうやら糸が手に付いたようだ。
「で、悪魔。なんでお金無いの?」
「課き」
「貸すのは無しです」
ちょっと前に30万課金したのに懲りてないなら仕方ないですね。
「ニンゲン!ボクと一緒に暮らしていて楽しいでしょう!少しくらいお金を貸してくれてもいいと思うのです!」
「あ?」
「この哀れな悪魔に慈悲の手をー」
慈悲って悪魔とか天使から施されるものじゃないの?
「このニンゲンの世界に来て長いですが、一言すごんだだけで悪魔族黙らせるの、ニンゲン殿くらいですよ」
狐に嬉しくない誉められ方をされてる気がする。
「ごんちゃん!不思議アニマル同盟ならボクの味方をするのが筋ですー!」
「そんな同盟、組んだ覚えはございません」
みそ汁をすすりながらすげなく袖にする。
「ニンゲン!何か言ってやるですー!」
「何か」
「みゃー!?」
なんか今日の悪魔面白いぞ?
「ほらごんちゃん、バカにされてますよ!」
「ミミちゃん、冷えピタは冷蔵庫にありますよ」
入れてないから!食品と一緒にしちゃダメです!
「い、良いです!ふたりともバカにして……こうなったら!」
『こうなったら?』
狐と悪魔を見つめているとモジモジし始めた。
「そんな、見つめられても何も出ません……」
なら振るな!
「ミミ殿、冷凍庫にビール入れておいたので飲んで寝ましょ」
狐!?破裂してないでしょうね!?
ウチには悪魔がいる。
「ごんちゃんー、冷凍庫爆発してますー」
狐かよ、今回の荒振りは!




