悪魔がウチにおりまして・617
ウチには狐がいる。
ナース姿の狐が。
ナース、ナースである。
今の世の中看護師と名前が変わり幾星霜。
男女の区別など無くなった。無くなったけどナースキャップ付けてスカート履いてるならそれは女性用なんだよな。
「き、狐ちゃん。おはよ」
「……ニンゲンちゃま!ボクの介錯をお願いします!」
挨拶しただけなのに玉のような涙をこぼしながら正座する。
「代々伝わりし『あぶらげ』、こんな形で使いとう無かった!」
腹かっ捌こうとするんじゃない。しかも脱いでないし。
……もしかして脱げない?
「実は呪いを受けまして」
狐、特殊な呪いを受ける性質なのか?
「この前はメイド服だったよね?」
「ころせー、ころせー」
正座からヘソ天でゴロゴロし始めたよ。
「ごんちゃん、日ごろの行いが悪いからつづらの」
言葉の途中で悪魔が壁にめり込む。
「ミミちゃん、ちゃんとした説明を。ボクの品位に関わります」
「狐ちゃん、狐ちゃん。悪魔白目向いてる」
この狐、怒ると怖いんだ。
「おや、情けない。このような弱い種族、根絶やしにしてくれよう」
今回キャラ崩壊がひどいなー。
「みそかつっ!?」
その目醒めセリフもどうなのよ。
「ミミちゃん、説明」
なんで肉球なのに握るだけで骨がなるんだろ。
「えっと、スズメのつづらって妖怪の物じゃないですか。だから良い行いはヒトをダメにする行為なんですね。逆に悪い行いは?」
「人助け?」
「exactly」
なんでめっちゃ発音良かったの、今!?
「くぅ、日ごろの行いが裏目に出るなんて……!」
それだけ真面目にやってるのにナース服だもんね。
悪魔、狐が気付く前にカメラを閉じなさい、折られるよ。
「ミミちゃん、専務殿と矢文できること、お忘れなく」
物理だけじゃなく!?
「ごん様、お日柄も麗しゅう……」
悪魔の言葉までバグりだしたぞ。
「ところで、どうすれば解けるの?この呪い」
「良い行いすれば、つまりヒトに害を成せば早いんですけどー」
理解が混ざるなぁ、その説明。
「なりません!狐族の名に泥を塗るわけにはいかないのです!」
こういうところ、真面目さんだよなぁ。
ウチには牛が居る。
「マジで?いや、マジですか?」
怖い者知らずの牛が。




