悪魔がウチにおりまして・615
ウチには悪魔がいる。
剣を振り回している危ない悪魔が。
「このつるぎ、聖なる光を見るが良いですー!」
アンタが聖なるモノ持ってて良いの?
「普通に銃刀法違反だから。ほら、自首してきなさい」
「ニンゲン!?こんなぷりちーなボクを売るつもりですか!?」
おう、今回語彙がおかしいぞ?
「自分のことぷりちーって言うのやめなさい」
アホっぽいから、と続けなかった私を誉めてやりたい。
「なぜですか!事実を言って怒られるですか!」
そう言いながら剣をぶんぶん振り回している。
「だがら危ないでしょ。その剣どこで拾って来たのよ」
「あぁ、グングニルですか?納屋にあったので持ってきたです」
グングニル、槍じゃなかったかなぁ。
「……アンタ、ここ以外に納屋なんか持ってたの?」
「会社にあるですよー。使った物を溜めておく倉庫みたいなんですけど」
そこに伝説の槍が剣の形で置いてあるのは突っ込むべき?
「基本的にそこに置いてあるものは貸し出し自由なのですよ」
ドンドン頭が痛くなってきた。
「その倉庫、中に何が置いてあったの?」
聞くのが怖いけど、コイツが目を付けているものを知っておかないといけないでしょう。
「えっとー、武器はそんなに?基本的に使った物が置いてあるだけなので」
その中から武器を見つけてくるの、ホント悪魔って感じ。
「貸し出しってことはちゃんと返してくるのよね?今日中よね?」
こういう時ってなぜか見つかって大変なんだから。
「み、ミミ君……それを見つけてしまいましたか……」
羊、おどろおどろしい雰囲気出してるけど、手に持ったポテチをしまいなさい。
「羊さん、そのポテチボクのです!」
ほらー、悪魔話聞いてないじゃない。
「その剣はその昔、魔王を討伐した時に使われた曰く付きの……ミミ君、興味持って?」
悪魔は羊を無視して持っている剣でキャベツを切り始めた。
それもどうなのだ。
「ニンゲンー、今夜はトンカツにしましょう」
あ、それアリだねー。
「ニンゲンさんも、興味持ってください?魔王討伐ですよ?伝説モノですよ?」
「そもそも魔王っていたの?」
悪魔がいる世界に魔王くらい居るか。
「今はマッサージで生計立ててますね」
魔王!威厳を持って!
「……もしかして、会社の近くのマッサージおじさん、魔王さんですか?」
恐る恐る尋ねる悪魔にゆっくり頷く羊。
あっちの世界って信じられないことばかりだなぁ……。
ウチには悪魔がいる。
「あ、欠けた」
本当に怒られろ!?




