悪魔がウチにおりまして・613
ウチには悪魔がいる。
クローゼットでコウモリしている悪魔が。
ハンガーを掛けるところに脚をかけて自ら逆さ吊りになっている。
「どうしたの?」
「ニンゲン、やる気が起きません」
いつも無いだろう、アンタは。
「なにせ4日も沖縄に行っていたのです、こうして引きこもりたくなるというものでしょう」
アンタが言ったのは、昨日。沖縄には日帰りだった、いいね?
「ニンゲン、日帰るには沖縄は遠すぎます。誰ですか、美ら海行った後に首里城登った阿呆は!」
言ってやるなよ、作者もひーひー言ってたんだから。
「しかし、このノリも久しぶりなのです。実はボク、こう見えて真面目だったのかも知れません。ソーキそばは1杯しか食べませんでした」
真面目さと食欲は結びつかないでしょうに。
「アンタにしたら珍しいわね、1杯で足りたの?」
「……足りませんでした、混んでました……」
他の人のために席譲って偉いねー、バナナをあげましょう。
「ばななっ!そういえば、泳いでいくのは無理でした。遠すぎます。ボク、こう見えてインテリなのです」
賢いならその逆さ吊りにはならないと思うの。
「で、やる気は帰って来そう?」
この前、やる気を家でさせていた気がするからどこかにいるんでしょ。
「今回、家出してません。起きないのです。目覚ましもアラームも利きません」
なんでアンタのやる気は物理で独立してんのよ。
「そのせいでしょうか。こうして頭に血が巡るようにしないとボクも寝てしまうのです」
……ちゃんとした理由、あったー!
「なんか、そこまでして起きてるくらいなら寝れば?」
この時間に家に居るなら仕事は無いんだろうし。
「やですー。動画を、アニメを、ソシャゲをー。積読も読まないといけないのにー」
割と煩悩はちゃんと生き残ってるから放置でいいかもしれない。
それよりも逆さ吊りのまま左右に揺れるな、ハンガー掛けがギシギシ揺れているでしょ。
「今日は諦めなさい。沖縄に置いてきぼりしてないならそのうち起きるでしょ」
やる気を置いてきぼり、コイツならやりかねないからな。
「ちなみにガマンは沖縄から帰ってきてません」
呼び戻せ、それは1番大事だろうよ!
「平気ですー。ガマンはいつも引きこもってるので普段から仕事してません」
だからか、コイツが自由にはっちゃけてるのは!
「ガマンは3つ子さんでしてー。今沖縄にいるのは上ふたりですね」
わかった、わからんから黙ろうね。
ウチには悪魔がいる。
「ガマンから写真ですー。アイス、ふたりで1個みたいですね」
ちゃんと我慢している!?




