悪魔がウチにおりまして・610
ウチには悪魔がいる。
さっきからしつこい悪魔が。
「ニーンーゲーンー!映画!映画に行きましょうよー!」
「嫌だってー。アンタどうせノベルティ目当てでしょー」
以前一緒に行った映画もアクキー目当てで誘われたのを思い出す。
「そうですけど!行きましょうよ!『迷い探偵・キリナカイツリ・トロワ。ドキッ!古墳だらけの埋蔵品!』ですよ!」
マズイ、タイトルだけ聞くと怖いモノ見たさで行きたくなるぞ?
「それ、どんなノベルティよ」
「5色に光るブーメランですー!イツリが最後犯人に投げつけるブーメランを配布するのです!」
探偵が暴行を働いているんですが?
「ん?5色に光るんでしょ?なら1個あれば良いんじゃない?」
だって、複数貰う意味が……。
「ニンゲン、そのブーメラン、色の組み合わせが10色ランダムなのです。嫌ですね、資本主義って」
悪魔の目から光が消える。
「10色……。要するに2種類……」
「ニンゲン、10色から、です。レアだと1色で光るパターンが変わるです。嫌ですね、資本主義」
2回言った!?
そのブーメラン、作るの大変でしょうに。
「……私がついて行っても、揃わないでしょ?」
全部の種類を計算しようと思ったけど怖いから辞めた。
「それでもっ!揃えたくなるのがオタクというものです!」
悪魔が堂々とオタクを名乗るな。
「それなら別の子誘いなさい。クモとかうぱとか狐とか」
「がってーむっ!なぜみーを呼んでくれ……沁みるっ!ミカン汁はやめてっ!」
タンスの裏から出てきたイモ虫にミカンの皮を絞る。
ほーれ、効くだろー?
「ニンゲン、霧吹きに牛乳入れてきます?」
「こちとらアブラムシじゃねーんだよ!あ、すみません、文鎮はダメです、物理です」
悪魔、あとで狐に返しておきなさいね。
「コレ、連れていけば?ヒマでしょ?」
「ヒマ!じゃなーい!みーは清く正しく美しくっ!悪なるモノを集めてコレクションし!世界を……トウガラシもやめてください、カプサイシン、効くんです」
モグラが真っ赤に熟れたシシトウを振っている。
イモ虫、もしかして駆除されてない?
「ぽんちゃん!キリナカ」
「やです」
早いっ!
「な、なぜ……」
「ミミちゃんは知っているでしょう。ボクは、血が、ダメです」
意外過ぎるだろ。
「出ません!ちょっとナイフが刺さるだけです!」
「出るじゃないですか、血。刺されて血が出ないのもやです」
面倒だな、このモグラ!
ウチではケモノが交渉している。
その交渉は3時間後に決裂した。




