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悪魔がウチにおりまして・607

ウチには悪魔がいる。

朝からワインをくゆらせている悪魔が。


「アンタ、何してんの?」

「ニンゲン、そのように感情をあらわにするのは庶民の姿、慎まないといけません」

あらわにしてねぇわ。それになんだ、その音楽家みたいなカツラ。

「羊、このアホどういうこと?」

「ミミ君ですか?アレはワインじゃなくジュースです」

聞いてないんだわ。

「昨日、スマホで『ベル百合』を呼んでて触発されたんじゃないですか?」

影響受けやすいったらないねっ。

「ニンゲン、今日の朝ごはんはなんですか?」

「納豆」

自分で作れという言葉を出さなかった私を許して欲しい。

「このボクに腐り豆です?」

久々に聞いたね、その呼び方。

「貴族たるボクにねばねばを食べさせるというのですか?」

「逆に何を食べたいのか言いなさい」

食べたい物があるなら別にそれでいいからね。

「そうですね、すくらんぼうえっぐなどを」

貴族さまの食事それで良いの?

「ニンゲンさん、私とろとろのたまごが良いのですが」

羊、自分で作って。それ難しいの。

「ボク、トーストの上に乗せて食べるの好きです」

悪魔が貴族スタイルが保てなくなってヅラを外す。

「だがらそれ、作るの大変なんだって」

そんなことを言っていると足をくいくい引っ張る何か。

「クモー、アンタもスクランブルエッグでいい?」

クモはゆるゆる首を振った。

アンタもワガママ言うの?

「クモちゃんがすくらんぼうしてくれるみたいですー」

悪魔の通訳を受けるとむしろこっちが首を傾げる。

「クモ、料理なんかできた?」

何か作ってるところなんて見たことなかった。

尋ねるとクモは胸をトンっと叩く。

クモをキッチンに入れる衛生面は今さら気にしません。

なんなら入った瞬間自主的に手を洗ってるし。

「クモちゃん、ニンゲンが居ない時、時々ご飯作ってくれるですー」

悪魔、それは2足歩行として悔しくないの?

そんなことを言っている間にスクランブルエッグとカリカリベーコンを皿に乗せて運んでくる。

「うわぁ、ホテルみたい」

「クモちゃん、さすがです。コレは駄賃です」

悪魔は貴族ヅラを被ってクモにキャラメルを渡す。

当のクモはキャラメルをロフトに放り投げる。

そこで顔を出したコモンずが手を振っていた。


ウチにはクモがいる。

「これからクモに朝ごはん作ってもらおうかな」

「にゅー」

鳴いた!?

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