悪魔がウチにおりまして・602
ウチには悪魔がいる。
リビングで卓球している悪魔が。
ウチに卓球台などなく、リビングにあるテーブルにお盆を立てて疑似卓球台にしている。
それなら別に構わない。
「羊さん、行くですよー!」
悪魔は”ボール”を手に乗せるとそっとテーブルに置く。
自動的に反対へ”走って”いくボール。
「なんのー!」
羊がラケットを振るとボールは反対に向かって走る。
「このー!」
悪魔が再びラケットを振るう。
直前ボールが曲がり、テーブルから転げ落ちていく。
「羊さん!ひどいです、カーブを指示するなんて!」
「これも戦略……トリックボールは3回まででしたよね?」
「あのさぁ、それ楽しいの?」
耐えかねて聞いてしまった。
3匹は目を丸くしながらこちらを向く。
1・左手、悪魔。
2・右手、羊。
3・ボール、イモ虫。
特にイモ虫、なんでアンタが首かしげて……なんで首があるのよ。
「楽しいに決まっているじゃないですか、ねぇ羊さん」
「ええ、そうですよね。ねぇ、イモ虫さん」
「いえー!盛り上がってるかー!」
イモ虫は振り返り2匹を煽る。
『いえー!』
ねぇ、大丈夫?怪しいお薬使ってない?
「実はこのイモ虫卓球、イモ虫さんからの発案でして」
名前に捻りも無いのはなんで?
「最近ミーは太りました。運動して痩せねばなりません。ですがただ運動って絶対無理、いやー無理。再び無理」
そこはみたびでしょ。
「なのっですっがっ!こうして誰かの役に立ちながら痩せられるのは至福っ!これは洋服のことじゃありませんっ!」
アンタ、服着ないでしょ。
「悪魔、本当に楽しい?お金貰ってない?」
「ニ、にんげんっ!ボクがお金で動くと思いますかっ!」
露骨に動揺してるじゃないの。
「羊は?」
「私は暇ですし。余興に付き合うのも一興かと」
大人だぁ。
「というわけでイモ虫。アンタ有罪。元に戻しなさい」
「えー」
そう言いつつ、イモ虫はお盆を担いでキッチンに戻しに行く。
素直でよろしい。
「で、悪魔は何のわいろを貰ったの?」
悪魔は指をつんつん合わせながら目を逸らす。
「チョコ、3週間分」
……絶妙!
ウチには悪魔がいる。
そのチョコを半分返している悪魔が。




