悪魔がウチにおりまして・600
『さぁ、始まりました。悪魔リーグ最終戦!9回裏ツーアウト満塁!実況は私、羊がお送りいたします!ここでバッターボックスに立つのは、もちろん悪魔ミミ!』
わぁっと歓声が上がるとヘルメットを左右に揺らしながら悪魔がバッターボックスに進んで行く。
『かっ飛ばせー、あ・く・まっ!』
外野スタンドからは大旗を振り、タオルを回すスタンドにいるのも大量の悪魔。
「ねぇいくら記念回だからってあまりにもトンチキじゃない?」
「ニンゲン、それを言ってはいけません」
ベンチ内で横を向いて話しかけたのはもちろん悪魔。
この回だけとはいえ、これだけ悪魔が大量にいるのはもはやツッコむ気もない。
バッターボックスに立ち、袖をくいっとしてバットを立てる。
なんか見たことのあるポージングだなぁ。
『かっ飛ばせー!あ・く・まっ!』
「ねぇ、自分で自分を応援する気持ちって?」
「ニンゲン、それは野暮です」
悪魔はキャップを被り直す。
「さ、結果を見るで」
言葉の途中で止まったのは悪魔の顔面にボールがめり込んでいるからである。
「ファールボールー」
審判の牛が間延びした感じに宣言して、ピッチャーマウンドのうぱにボールを投げる。
おいおい、ピッチャーうぱかいな。
「……侮ってはいけません。うぱちゃんはああ見えて防御率0.00の名投手です」
……それってマウンドに立ってないだけじゃない?
『さぁ、カウントはフルカウント。追い込まれた、悪魔ミミ!』
空気を読まず進んで行くアナウンス。
もはやご都合なのは気にしてはいけません。
『ここでなかなかサインが決まらない!おぉっと!ここでマウンドに監督・権之助が進んで行く!ピッチャー交代か!』
狐が監督なのねー、代わりに出てくるの誰だろう?
ここでわっとスタンドが湧く。
ゆっくり現れた彼女、遠くてもオーラで大きく見える存在感。
『ピッチャー交代!背番号0番!アンノウーン!』
やり過ぎだろ、それ!!
「あまり野球はしたことありませんけどー」
のんびりとした口調でパフをぽんぽんと弾ませ粉を手に付ける。
バッターボックスに立つ悪魔が目を鋭くする。
「プレイっ」
すぱん。
……は?
牛が再開コールした直後、クモのキャッチャーミットに収まるボール。
「審判さん、コールは?」
「す、ストライク、バッターアウトー。ゲームセッ!」
この最後の投球は、ウチあく界に残る伝説となったとかならないとか。
それよりクモ、よく捕ったわね。




