悪魔がウチにおりまして・594
ウチには悪魔がいる。
目隠しをして椅子に座っている悪魔が。
目の前に並ぶ5つのグラス。
中に入るは琥珀の液体。
腕を組んでいる牛。
……前、同じような光景、見たな。
確か以前は利きチョコしてたけど。
「牛、今回は何?」
「ニンゲン!ウヰスキーですー!」
悪魔、今どうやって発音した!?
「今回はミミさんからのお頼みです。ウイスキーの中にしょうゆを混ぜて、どれに入っているか当てるのです」
その意味は!?
「ほら、最近舌がバカになってる気がしまして。良いウイスキーが手に入ったので鍛えようかと」
職人に謝れ!ウイスキーとお醤油作ってくれた人たちに謝れ!
「今回どちらももったいないので1滴だけ垂らしました。もし気付かなければ美味しく飲める量になってます」
さすがバーの店長、お酒を無駄にしない心意気。
それなら元々やらないでいただきたい。
ちなみに悪魔は既に酔ってます。
「ねぇ、コレ何回目?」
「4回やって、当てたの0です」
ただ飲みたいだけになってない?
「この目隠しをしたままおつまみのメーカー当てるのは10回中11回です」
1回増えてるのなんで?
「それはですねー。秘密ですぅ」
上機嫌の毛むくじゃら、ダル絡みしてこないから許しましょう。
「ちなみに製造年月日を当てて2ポイントです」
その舌を以ってバカになったと?
「ある時期を境に材料が変わりましてー。牛さん、コレにしょうゆ入ってますー!」
「はーい、もう1回でーす」
このやり取り、10回やってるのか。
「悪魔ってこんなにお酒弱かったっけ?」
最近飲まないけど、ウチに来たときは結構ビール飲んでたはずなのに。
「なんかー、ウイスキーは回るのですー」
アルコール度数、ビールに比べたら高いからなぁ。
「たぶんコレだけですね。ほら、蒸留した水を使って仕込むって書いてあるでしょ。要は聖水じゃないですか」
ねぇ、それ祓われてるのでは?
「大丈夫です、聖水でどうこうなるほど私もミミさんも弱くないので。ただ、明日面倒だと思いますよ」
牛が悪魔を薄い目で眺めながらため息を吐いた。
次の日、言葉が正しいことがわかる。
「ニンゲン……頭割れそうです」
「迎え酒入れる?」
二日酔いでぶっ倒れている悪魔が。




