悪魔が牛におりまして・592
牛には悪魔がいる。
自分で言っててわからない。
「ニンゲンー、助けて欲しいですー」
朝悪魔がいないと思ったら玄関から入って来た牛の中にいた。
どういう状況なのかって言うと、牛のお腹が格子状になっていて、その中にミニマム悪魔が牛の腹をゆさゆさしている状況で。
「どういうこと?」
「わからんですー」
「驚きました、朝起きたらお腹空洞なんですもん」
牛さん、落ち着いてますねー。
「ニンゲンー。どうしましょー」
どうしようもなかろう。
「ねぇ、これニセモノとかじゃない?ホログラフとか」
かろうじての可能性を信じて牛のお腹に手を入れる。
スカっ!ちゃんと空洞でしたっ!
「そこらへんはちゃんと確かめたんですよ。私のお腹の中にはちゃんとミミさんが宿ってます」
その言い方、なんかイヤなんですけど。
「違うパターンとしてこの悪魔が別物ってことは?」
確かめる方法があるのかは知りません。
「そうだ、悪魔ー。牛を歯」
「ニンゲン?ボクの電気は小さくてもたぶん変わりませんよ?」
「それやられると私も感電するので勘弁してもらいたいですね」
うん、両方ホンモノっぽい。
しかしこの怪奇現象、どうやって解決しましょうか。
「ところで牛、何か食べるとどうなるの?」
「やってみますか」
牛はペットボトルを取り出すとぐびぐびと飲み下す。
しゃがんで悪魔のいる高さに目を合わせる……が。
何も起きない。水の一滴も落ちてこない。
「牛さん、ちゃんと飲んでますー?」
「飲みきりましたよ。……私の飲んだ水、どこに行ったのか」
新たな悩みはあとあと。
「実際牛は困る?」
「私は別に?ご飯も食べられますし」
「ボクは大問題ですー!ログボが、ログボがー!」
最近コイツのソシャゲガチが怖い。
「悪魔、パスコード教えてログインまでしとくから」
「666ですー」
なんで3桁で開くのか。
悪魔を落ち着けたところで話を進めよう。
「……解決って必要かな?」
「どういうことですか?」
牛と向き合う。うぱ、悪魔を割り箸で突つくのやめなさい。
「こう言っては何だけど。解決策無いと思うの」
「ですよね、たぶん神のイタズラですよね」
神っていうか……うん。
「でね?放っておけば直ると思うの、具体的には明日には」
「納得です、放っておくに賛成です」
「スタミナー!」
牛には悪魔がいる。
なんか偉そうに操作指示してくる悪魔が。




