悪魔がウチにおりまして・590
ウチには悪魔がいる。
串をくるくる回している悪魔が。
「ニンゲン!次は何を焼きましょう!」
「そうしたらカワとつくね」
「あいよっ!」
悪魔は威勢よく返事をすると串に刺さった肉を七輪に乗せる。
なんで悪魔がベランダで焼き鳥焼いてるのかって言うと、お金が無いから肉体労働で稼いでいるわけで。
ちなみにベランダにはクーラーボックスに入った大量のビール。
そして焼いた端から自分でも食べている。
労働を舐めるな。
「ちかし、ミミ殿のこの焼き加減……文字の焼き鳥を思い出ちますね」
狐はうっすら涙を浮かべて焼き鳥を口に運ぶ。
もはやツッコむ気力もないっす。
「へいへいっ!ミーが焼き鳥を食べる!これこそ下克上ってヤツですねっ!」
だまらっしゃい、被捕食者。
なんで普通にイモ虫が焼き鳥食べてんのよ。
「お酒持ってきたのー。ちゃんと酒蔵から仕入れたのー。ちゃんと物々交換してる、イモ虫偉くない?」
くぅ、嫌悪感しか言い返すところがない。
「ミミさんに意外な才能がありましたね、牛タンひとつ」
……ナチュラルに牛が牛食べてる。
「だから私は牛の皮被ってるだけですって」
「そうです!私も羊の皮を被った狼かも知れなかったりします!ミミ君!ラムはありませんかっ!」
毛まで赤く染まった羊が共食いを所望する。
「羊さん、さすがに管理が面倒なのでありません。レバ刺しならありますよ」
悪魔!それはやめなさい!
「ニンゲン殿、某たちなら生のレバーを食べても平気ですよ、たぶん」
狐がおちょこを傾けながらご満悦の表情。
「ニンゲンー、しばらく自分の分焼いてて良いです?」
「見てるぞ、さっきから自分のメインにしてるの」
1:3くらいの割合で自分でしょ。
「こういう居酒屋スタイルも良いわねぇ」
ほんのり浮かぶ月を見上げながら日本酒をあおる。
イモ虫が持ってきたにしてはいい味。
「実は日本の酒蔵に縁がありまして。侵入した納豆菌を殲滅した時のことなんですけど」
……ちょっと気になるの、悔しいんだけど。
「ニンゲンー。ボクも日本酒飲みたいですー」
「別!両!金!」
イモ虫、今度潰されても知らないよー。
ウチでは宴会が続く。
……肉、何キロあるんだろ。




