悪魔がウチにおりまして・57
全員集合、たんぼにいる。
どうやら出所はここのようで。
「たんぼよ?」
周囲には土しかない、たんぼのあぜ道。
季節が違えば稲穂が生い茂っていたのだろうが、今は冬。
水もなくただ渇いた土があるばかり。
「さすがに近付くとわからないな」
「ですねー。どこかしこに匂いが感じられてココって場所までは」
天使と悪魔が見回しながら何か言っている。
「ねぇ、たんぼよ?」
「ニンゲン、別に邪な者は場所を選ばないのですよー」
「たちかに、変な匂いがちます。某でもわかるのですから位は低いでしょう」
狐がすんすんと鼻を鳴らしている。
クモは何やら小さなクモに号令をしている。
まさにクモの子を散らしている…産んだの?
「昆虫族の権能ですね。まぁ私どもは1人でも力が大きいので必要としませんがっ」
羊は聞いていないことまで話している。
だから嫌われるのだ…おっと失言。
「相当無礼な気配を感じました。このあたりに居るのは間違いないですね」
いい感じに勘違いをしてくれたので良かったです。
手分けして「憑いている」ものを探してくれているのだが一行に見つかる気配はなく。
「ねぇ、ここには…」
刹那。
周囲の空気が私にもわかるくらいに重くなる。
急に暗くなり、寒気が増して、居るとわかる。
『タチサレ…我ガ領域ニ踏ミ込ム者ニハ滅ビヲ…』
どこからともなく声が聞こえて皆が殺気立つ。
「人の仔。私から離れるな」
「ニンゲン、気を付けて」
いつになく頼もしい悪魔。天使は知らない。
「とうとうしっぽを出しましたね。管理局の名の元に連行します」
羊、なんかすげえ役職だった。
「あね様に危害を加えるなんて許ちません」
狐、その呼び方やめなさい。クモもやる気を出してポンポン跳ねる。
そこに突然の突風。
ふいに吹かれたせいでバランスを崩し数歩後ずさりをしてしまう。
『フハハ…我ニ逆ラウトドウナルカ、教エ…むぎゅう』
…声が途切れた。
空気は戻り、雲は消えて、暖かい風が吹く。
「祓えましたね」
羊がぽつりと溢し、あっけに取られている。
左右を見る。首を振る面々。
「…ニンゲン、右のカカト上げてみてください」
言われた通りに足を上げると、すーっと煙が立ち上っていった。
微妙な空気の中に私は居る。
え?なんかやっちゃいました?




